実践ビジネススクール
2008年 11月 17日

大前研一|「史上最大の金融危機」これが世界を救う方法だ!

大前研一の日本のカラクリ

「アメリカ発金融危機」は全世界へと波及した。いま打つべき最善の手は何か。ずばり提言する。

不安と憶測が生む「最悪のシナリオ」

まず何がいけないかといえば、危機の現実を政府がとぼけてきたことだ。現実をきちんと把握せずに政府がとぼけているから、不安と憶測がどんどん助長され、ひとたび危機が表面化すると一気にパニック状態になる。

バブル崩壊から金融危機へとひた走った90年代の日本がまさにそうだった。細川護煕内閣時代の93~94年頃、私は「不動産不況で100ぐらいの銀行が潰れ、株も1万2000円から9000円のレンジに下落、東京の地価は10分の1に暴落し、不良債権は100兆円を下らない」と、月刊誌などで繰り返し指摘してきた。

どこぞのシンクタンクがそれ以前には株価は4万円を突破して6万円間近と煽り、東京の不動産でアメリカ全土が買えるといわれていた時代。しかし企業収益や賃貸料などの収入から計算される収益還元法で見る限り、株価も地価も実体経済に見合っていなかった。

だが時の政府・大蔵省は不況に向かっていることを認めようとはしなかった。武村正義大蔵大臣(当時 村山内閣)が認めていた不良債権額は13兆円。その後も低く見積もったまま不良債権処理を引き延ばし、景気は回復していると言いながら、ずるずると金融危機の泥沼に足を取られていった。

それから十数年後の一昨年、福井俊彦・前日銀総裁が、不良債権処理のために国民が犠牲となった額は300兆円だったとようやく認めた。不良債権で危機に陥った銀行を救済するために超低金利政策を続け、結果、国民が本来得られるべき預金の利息が200兆~300兆円も失われた、と認めたのだ。政府がとぼけている間に、国民1人当たり300万円ずつ損をした、という勘定になる。

今回のアメリカの金融危機でも、当局は危機の現実をとぼけてきた。住宅市場の悪化で日本の住専に当たるファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)やフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)が危ないと言われたつい最近まで、政府はまったく問題ないと繰り返してきたのだ。

FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は、今年に入ってからも「アメリカの金融システムはまったく問題ない」「金融・住宅市場の混乱は収まる」と言い続けてきた。それがいつの間にか「我々は危機の真っ只中にいる」に変わった。いつ境界線を踏み越えて危機の真っ只中に立ったのか、彼の発言履歴を調べてもまったくわからない。

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プロフィール

大前 研一

ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長

1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾

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