実践ビジネススクール
2008年 11月 17日

大前研一|「史上最大の金融危機」これが世界を救う方法だ!

大前研一の日本のカラクリ

「アメリカ発金融危機」は全世界へと波及した。いま打つべき最善の手は何か。ずばり提言する。

こうした政府の対応が、結果的に危機のコントロールを難しくさせてしまった。いまのアメリカの最大の問題はクレジットクランチ、すなわち信用収縮だ。羹に懲りて膾を吹くという状況になり、銀行の貸し渋りが始まっている。

個人向けのローンさえまともに組めなくなっているのだ。自動車ローンぐらいなら払えるという人にもローンが下りない。その結果、景気後退とガソリン高騰の影響で低迷が続いていた自動車の米国内販売台数はさらに悪化、対前年比26%減まで落ち込んだ。

自動車メーカー各社の資金繰りは急速に悪化し、フォードやクライスラーはおろか、世界最大の自動車会社であるGMまでもがいつ倒れてもおかしくない、救済には国営化しかない、という状況に陥っている。今後、日本の自動車メーカーも巻き込んで、世界的な業界再編の動きが加速するだろう。

暴挙ともいえる「個別処理」の欠陥

今回の金融危機の初動におけるもう1つの過ちは、システミックな問題であるのに皆が使える流動性の仕掛けをつくらないで、いきなり当局が個別案件処理に走ったことだ。

ポールソン財務長官は、3月のベアー・スターンズ危機では救済に動き、290億ドルの特別融資という公的資金付きでJPモルガンに買い取らせた。

ところが(ゴールドマン・サックス時代の仇敵である)リーマン・ブラザーズの経営危機では、「公的資金の投入は一度も考えたことがない」と突き放して救済を拒否、負債63兆円という世界最大の倒産劇の引き金を引いた。

AIGは公的資金を入れて救済することを決め、メリルリンチはバンク・オブ・アメリカに吸収させている。
 インターネット上での「サイバー取り付け騒動」が起きて1週間で2兆円もの資金が流出したワシントン・ミューチュアルは、見殺しにされてリーマンに次ぐ史上2番目、32兆円の大型金融倒産になった。
 一方、ワコビアはシティバンクに押しつけた。これは西海岸のウェルズファーゴが7倍以上の価格を提示してさらっていった。ゆっくり探せば買い手はいくらでもいた可能性があるのだ。

ポールソン氏はもともとゴールドマン・サックスのCEOである。経営者というのは、与えられた課題は解決せずにいられない生き物だ。しかし、こうした個別案件処理を続けていると、必ずマーケットでは「次に危ないのはどこか?」という破綻先探しが始まる。最後の1行になるまでこれでは連鎖が止まらない。

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プロフィール

大前 研一

ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長

1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾

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