実践ビジネススクール
2008年 11月 17日

大前研一|「史上最大の金融危機」これが世界を救う方法だ!

大前研一の日本のカラクリ

「アメリカ発金融危機」は全世界へと波及した。いま打つべき最善の手は何か。ずばり提言する。

金融危機を収束するには、無用なパニックを引き起こさないような仕掛けが絶対的に必要となる。銀行の場合、たとえば預金で集めた金を100とすると、うち95は貸し付けに出している。手元には5しか残っていないわけで、健全な銀行でも、取り付け騒ぎが起きて預金の引き出しが続けば出血多量で倒れる。すべての銀行は、パニックになれば資金不足で倒産する運命にあるのだ。

しかもポールソン氏のやり方は方針が一定していない。同じ投資銀行でも最初のベアー・スターンズは救済したのに、リーマンは見放して潰した。ワコビアは救ったが、同じワシントン・ミューチュアルは潰したのだから、貯蓄銀行だから救ったというわけでもない。方針が一定していないから、「私がお金を預けている銀行はどうなるのか?」という不安が増幅される。これがパニックを呼ぶのである。

日本の金融危機を教訓にするなら、個別案件処理は絶対にやるべきではない。日本では結局、都市銀行が3行に絞り込まれ、あとは「りそな」のようにいざとなったら国が丸抱えするという段になってようやく破綻の連鎖が止まった。アメリカも個別案件処理を続ければ、最終的には4つほどの銀行しか残らないだろう。恐らくはシティとバンカメ(バンク・オブ・アメリカ)、JPモルガンの3行に、今回合併で誕生したウェルズファーゴ+ワコビアだ。

数が減るというのは、利用者にとって選択の余地がなくなることを意味する。日本では12ほどあった非常にカラフルな都銀がいまや退屈この上ない3つに収斂された。

残った3つの銀行は、合併や再編成でスケールこそ膨らんだものの金融庁のご機嫌取りの自己チュー銀行ばかりで顧客サービスなど二の次、利回りのいい金融商品など出さない。いまは総額140兆円もの金が貸し出されないまま金庫に眠っている。しかも倒れたら国にケツを拭いてもらえるとでも思っているから、サラ金会社を買い漁るなどやりたい放題。超低金利の恩恵を受けて史上最高益を挙げながら国民に還元するでもなく、今度はモルガン・スタンレーに出資。私に言わせれば、出資よりも国民への挨拶のほうが先だ。

モルガン・スタンレーを救済した三菱東京UFJ銀行。
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モルガン・スタンレーを救済した三菱東京UFJ銀行。

しかも三菱東京UFJ銀行の場合、最後の段になって普通株ではなく(損金計上しなくて済む)優先株取得に日和ったため、経営権は握れない(実際には後日12%までの普通株転換は可能だが、資金を入れたときの時価で買っていれば3分の2以上の支配権が握れた勘定になる)。もっとも買った側より給料が3倍も高い社員を使いこなすことなど到底できないだろうから、利回り狙いの救世主、というのは三菱には相応しい役割に違いない。

一方、リーマンの人材を買った野村証券にしても、1000億円を用意して2年間も高給を保証、2年勤務したらボーナスまで出すというのだから、雨宿りのために高級ホテルのスイートを使わせるようなもの。投資銀行の社員というのは給料を保証しないからシャカリキに仕事をするのであって、これでは仕事などするわけがない。

顧客を忘れたメガバンクによる寡占は、同時に銀行がサービス産業でなくなる日となる。寡占は傲慢を生む。傲慢な銀行は、貸し渋りや貸し剥がしをして経済を窒息死させる。アメリカ人は、そのことに気がついていないのだ。

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プロフィール

大前 研一

ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長

1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾

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