
築山節・池谷裕二―眠った力が目覚める7の習慣【1】
最新脳医学:人気の医師&科学者が「差がつく」秘訣を指南
脳の専門家2人に、「朝一番にすべきこと」「夜寝る前にすべきこと」「集中力を高める」処方箋を聞く。(全2回)
村上 敬=構成 相澤 正=撮影
脳の持つ能力を最大限に引き出すには、まずは毎日、同じ時刻に起きる。夜寝る前には手足を温め、情報の入力に時間を使うのがよいという。脳の専門家2人に、記憶、集中、思考、発想する力を高めるための処方箋を聞く。
築山節●医学博士・財団法人河野臨床医学研究所理事長
1950年、愛知県生まれ。日本大学大学院医学研究科修了。第3北品川病院長を経て現職。
脳神経外科専門医として数多くの診断治療に携わる。
著書に、ベストセラーとなった『脳が冴える15の習慣』のほか、『フリーズする脳』『脳と気持ちの整理術』などがある。
池谷裕二●東京大学大学院薬学系研究科准教授
1970年、静岡県生まれ。98年、東京大学大学院薬学系研究科にて、海馬の研究により薬学博士号を取得。
2002~05年、コロンビア大学客員研究員。
著書に『海馬』『進化しすぎた脳』『脳の仕組みと科学的勉強法』『怖いくらい通じるカタカナ英語の法則』などがある。
差がつく習慣【1】朝一番にすべきことは
●築山先生からのアドバイス
脳のためには、朝は一定の時間に起き、太陽の光を浴びることが大切です。人間の脳は24時間同じ性能を発揮できるのではなく、働きたい時間と休みたい時間を周期的に繰り返しています。その周期と生活のリズムが合わないと、いわば時差ボケと同じ状態が1日中続くことになります。生活のリズムが不安定な人は要注意です。まず生活の原点をつくるという意味で、毎日同じ時刻に起きる習慣をつけてください。
起床後は、脳のウオーミングアップが必要です。起きてから脳が活発に働くまで約2時間かかりますが、ボーッと座っているだけだと、さらに時間を要してしまいます。私の場合は毎朝5時半に起きると、まず着替えを済ませ、子供たちを起こしていきます。次に部屋を片づけ、犬の散歩で1時間歩きます。
脳のウオーミングアップというと、単純な計算問題を解いたり、新聞のコラムを読むなど思考系を活性化することを考える人も多いかもしれません。それらも悪くありませんが、脳の準備運動として効果的なのは、足・手・口といった運動系を意識して動かすことです。
頭を活性化させるのに、なぜ思考系ではなく運動系の機能を使うといいのか。生物の進化や人間の成長の過程を見てもわかるように、人間の脳には思考系以前に感情系や運動系の機能が存在しています。人間は二足歩行をして、手を自由に操り、口を使って言葉を話すことができるようになって、初めて高度な思考力を発達させてきました。1日の過程も同じで、まず運動系の機能を十分に動かすことが、思考系の活性化に役立つのです。
とくにおすすめしたいのは、歩くことです。足を動かすための機能は頭頂部に近いところにある脳領域が担っているため、歩くうちに血液が脳の高いところまで汲み上げられ、その結果、脳全体に血液が巡りやすくなります。
朝早く起きて散歩をしたり、通勤でも1駅手前で降りて歩く習慣をつけるといいでしょう。コースを変えると脳が変化に対応して、思考系も活発になります。
●池谷先生からのアドバイス
子供のころ、毎朝、歯を磨くことを面倒に感じたことがある人は多いと思います。しかし、大人になって歯磨きを嫌がる人はほとんどいない。むしろ磨かないと気持ち悪いという人のほうが多いはずです。これは、歯磨きという行為がルーティンワーク化されたからです。
ルーティン化には、無意識の記憶を司る線条体や小脳が関与していると考えられます。毎日の習慣にすれば、朝のこまごまとした身支度が苦にならなくなるのも、無意識が勝手にやってくれるからです。ルーティン化は、面倒なことをやるのに非常に強力な方法なのです。
朝の仕事も同じです。朝出社して「今日はどの作業から取りかかろうか」と考えているようでは、仕事は思うように捗りません。大切なのは、意識に立ち上らないレベルまで習慣化してしまうことです。例えば「まずメールチェックをして、次は予定表を書く」というように、やる作業を固定して毎日繰り返せば、いずれ苦もなくこなせるようになります。
ルーティン化は、慌ただしい朝を過ごす人ほど効果的です。脳には「ワーキングメモリー」という短期的な記憶を処理するメモリーがあります。ワーキングメモリーは意外に容量が少なく、1度に意識できることは七つ程度が限度だといわれています。一方、無意識の記憶に制限はなく、無意識の領域に仕事をさせれば、より多くのことが同時並行で処理できます。この性質を利用しないのはもったいない。毎日やるようなこまごました仕事は、ルーティン化することで脳の無意識に任せてしまいましょう。
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