
築山節・池谷裕二―眠った力が目覚める7の習慣【2】
最新脳医学:人気の医師&科学者が「差がつく」秘訣を指南
脳の専門家2人に、「やる気を高める」「閃きを生む」「記憶力を高める」「持続力を高める」処方箋を聞く。(全2回)
村上 敬=構成 相澤 正=撮影
差がつく習慣【5】アイデアや発想が浮かばないときは
●築山先生からのアドバイス
アイデアや発想が浮かばないときの脳は、思考が固定されて堂々めぐりをしている状態です。別のいい方をするなら、脳の同じ部分だけを繰り返し使っている状態ともいえます。
発想を変えるには脳の別の部分を使えばいいのですが、「いつもと違う部分を働かせよう」と意識しても、脳は反応しない。脳を変化させるには、まわりの環境を変えるしかありません。
散歩中にアイデアが浮かんだという話をよく聞きますが、あれも場所を変えたことで新しい情報が五感から次々と飛び込み、それに対応しようとして思考が変化したためです。
パソコンやテレビから新しい情報を得て刺激を受けるという方法もありますが、情報の内容は変わっても、モニターに映し出された平面的な情報ばかりを見ていると、目の焦点が変わらないため、脳の変化はあまり起こりません。
それより効果的なのは、目のフォーカス機能を使って立体的な情報をキャッチすることです。やはり外に出て、遠くのビル群や空に浮かぶ雲を見て目を動かしたほうがいいと思います。
遠くを十分に観察したら、こんどは逆に思い切り小さな世界に焦点を移してみます。例えば観葉植物の葉脈や地面を這うアリの様子を観察すると面白いかもしれません。こうやって目の焦点をダイナミックに切り替えると、脳が急激な変化に対応しようとして思考にも柔軟さが出てきます。
●池谷先生からのアドバイス
図を見てください。それぞれブーバとキキという名前がついていますが、あなたはいったいどちらがブーバで、どちらがキキだと思いますか。
おそらく1番がキキ、2番がブーバだと考えたはずです。実はそう答えるのはあなただけではありません。「ブーバ・キキ試験」として知られるこの質問をさまざまな言語圏で実施したところ、約98%の人が同じ回答をしています。
なぜ1番がキキなのかを論理的に説明できる人は、まずいないと思います。それにもかかわらず、なんとなく正解がわかる。これを直感といいます。
直感のもとになるのは方法記憶です。自転車に乗るときは体中の筋肉を使いますが、あまりに動きが複雑で、それを意識するのは困難です。しかし、実際は方法記憶として無意識の脳が記憶しているため、筋肉の動きを意識しなくても自転車に乗れます。直感もこれと同じで、意識はできなくても、無意識の脳が膨大な処理をして答えを導いてくれるのです。
直感は、経験を積めば積むほど精度が増します。なんとなく浮かんだアイデアをうまく説明できずに窮することがあるかもしれませんが、キャリアを積んだビジネスマンなら選択に自信を持つべき。若い部下に「根拠がない」と指摘されても、無視してしまえばいいのです。
一方、理由を説明できない「直感」とは異なり、思いついたあとに理由が説明できる考えを「閃き」といいます。すでに説明したとおり、閃きを生むには睡眠中の無意識の脳に考えてもらうのがもっとも効果的だと私は考えています。
ただし、とにかく情報を入力すればいいというものでもありません。日本語でいう「多様性」には、雑多な状態である「バラエティ」と、派生してつながりがある「ダイバーシティ」という二つの意味があります。閃きとは、バラエティになっている情報を整理して、ダイバーシティに変えることで生まれます。
その処理を睡眠中の脳に任せるのですが、「何がいま問題になっているのか」をきちんと理解できていなければ、バラエティはバラエティのまま。「起きたらあの問題を解決しよう」と意識することで、はじめて脳は雑多な情報から有機的なつながりを見つけようとするのです。夜眠る前には、情報をインプットすると同時に、課題を再確認することです。私は毎日これを実行しています。
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