
すでに危ぶまれるオバマの公約:「国民皆保険」
堀田佳男の「2008アメリカ大統領選ウォッチ」 第12回
オバマ氏の選挙公約の目玉だったイラクからの米軍撤退(1年半)と国民皆保険は、両方とも『公約破り』になる可能性が!?
文=堀田佳男
「オバマ次期大統領の選挙公約は本当に守られるのでしょうか」
あるメディアとのインタビューで、こう質問された。
「内外の状況を踏まえると、なかなか難しいです。特にオバマ氏の目玉だったイラクからの米軍撤退(1年半)と国民皆保険は、両方とも『公約破り』になる可能性がある』
そう答えるとインタビュアーの女性は「エッ、そうなんですか」と咄嗟に反応した。
イラク戦争に当初から反対していたオバマ氏が共和党のゲーツ国防長官を留任させたことで、2010年夏までの米軍撤退が難しくなったことは前回の連載記事ですでに述べた。
国内問題の最大焦点であった国民皆保険も、実現に向けては問題が山積みである。ご存知の方も多いと思うが、アメリカには日本やカナダのような国民皆保険制度がない。政府が健康保険の面倒をみないので、アメリカ人は民間の保険会社に加入せざるを得ない。
低所得者を中心に、健保に入っていない人は今や4700万人に上る。この数字は毎年上昇している。ただでさえ世界一高いといわれるアメリカの医療費を自腹で支払う負担は大きい。
ワシントンにいる知人は以前、胆石で手術し、3日間入院しただけで、後日郵送されてきた請求額は300万円を超えていた。健保に加入していなかったために全額自己負担となった。支払い能力があったからまだいいが、自己破産者の多くは医療費の債務不履行が起因している。
長年この問題に取り組んできたヒラリー氏は、予備選時、4700万人すべてに健保を提供しようと提案した。一方、オバマ氏の改革案では1500万人があぶれてしまうといわれている。「いずれはすべてのアメリカ人に」との方向だが、具体的な期日や方策はまだ見えていない。
「国民すべてに」という方向性は素晴らしいし、先進国である以上そうあるべきだが、現状を直視するとウルトラCをいくつも出さないと実現できそうもない。
オバマ氏が12月6日に発表した大規模な景気対策の中には、医療システムの近代化と最新の情報技術の導入が盛り込まれていた。1930年代にルーズベルト大統領が行ったニューディール政策の21世紀バージョンである。大々的インフラ整備によって雇用を生み出し、景気を活性化させていく古典的な経済政策である。
堀田 佳男
1957年東京生まれ。早稲田大学 文学部を卒業後、ワシントンDCにあるアメリカン大学 大学院国際関係課程修了。大学院在学中に読売新聞ワシントン支局で1年間助手を務める。卒業後、米情報調査会社に勤務。アメリカの日刊紙の日本語ダイジェストの執筆・編集に携わる。永住権取得後、1990年に会社を辞して独立。以来、ジャーナリストとして政治、経済、社会問題など幅広い分野で精力的に執筆活動を行っている。25年の滞米生活後、2007年春帰国。
著書に『大統領はカネで買えるか?』(角川新書)『大統領のつくりかた』(プレスプラン)など。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
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