実践ビジネススクール
2008年 12月 16日

大前研一の日本人論―活路を開いた男たちの志、気概に学ぶ

特別寄稿:松下幸之助、本田宗一郎、川上源一、盛田昭夫……熱き思いと野心が日本を変えた

かつて日本には、熱き「志」と「気概」を胸に秘め、敢然と国外へ飛び出し、世界的な大企業に成長させた優れた経営者たちがいた。

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金融機関も90年代のビッグバンと金融危機を経て合併・集約され、新しく看板をかけ替えたところもある。しかし実態は足し算をして規模が巨大化しただけで、世界で勝負する経営能力を身につけたわけではない。実際、三菱東京UFJ銀行はモルガン・スタンレーを買収する千載一遇のチャンスを得たものの、最後の最後で損失計上しなくても済む優先株の取得に日和ったため、1兆円近くを出資しながら経営権を握れなかった。2年間の高給保証でリーマン・ブラザーズの人材を買った野村証券にしても、高級ホテルのスイートルームで雨宿りをさせるようなもので、2年経ったらボーナスを払って逃げ出されるのが関の山だろう。

要は、世界を相手にできる経営力が備わっていないのだ。生保など図体の大きい会社はあるが全部内弁慶。リクルートも国内ではガリバー企業だが、同種の人材斡旋で年商4兆~5兆円クラスは世界に数社あり、トップ5にも入らない。

結局、20年前にグローバル化を果たし「世界に冠たる日本の企業」と言われた会社がますます強くなり、今日においてもグローバルなポジションを維持している。それはそれで立派なことに違いないが、「失われた15年」と日本経済が評されるように、以降に生まれた後進企業のほとんどはグローバル化できていないのが現状だ。

英語が話せないのに
海外へと自ら動いた松下幸之助の凄さ

四半世紀を超えて世界に君臨する日本発のグローバル企業は、いずれもモノづくりに秀でた会社ばかりである。製品が品質の高さを物語る、黙っていても使ってもらえればよさがわかるような領域では、日本企業は俄然強さを発揮する。

その理由は3つある。

1つは、日本的経営が持っている粘り強さ。円高、原油高、環境問題など数々の逆風に晒されても創意工夫でそれを乗り越え、ピンチをチャンスに変えてきた。

2番目は、モノづくりを支える部品業のインフラ。東京・大田区、東大阪市、長野県諏訪湖周辺、静岡県浜松市周辺と、部品業の大きなクラスターが日本には4カ所ある。かつては大田区だけで8000社を数えた部品メーカーが今や3000社しかないというから先々のことを考えると暗くなるが、これだけの部品インフラは世界中どこを探しても見当たらない。中国も台湾も韓国も、日本の基幹部品と工作機械を買ってアセンブリーだけ自前でやっているようなもので、日本との貿易不均衡を構造的に抱えている。

3番目は、マーケティングやチャンネル開拓、商品開発など市場への積極的な投資。日本のメーカーは収入の25%相当分を、売り上げた海外マーケットに投資して、社名や商品のブランド化に励む。サービス網や物流デポなどにもカネを惜しまない。

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プロフィール

大前 研一

ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長

1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾

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