職場の人間関係学
2008年 12月 29日

インド人は議論好き、ベトナム人は努力家

インドやベトナムはグローバル化を進める日系企業にとって将来の成長を考える際に無視できない存在になってきている。

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おだてのマネジメントと不安解消のマネジメント

そのうえで日々どのように従業員と接していけばいいのかが、次に問われるテーマだ。

「インド人とのコミュニケーションでよく言われることですが、仕事上のミスなどについて、他のスタッフがいる前で叱ると遺恨を持たれるという話があります。叱る場合には個別に別室で行い、皆がいる前では、『よくやってくれている』と褒めるくらいの気づかいが必要です。インドにおいてコミュニケーションで大切なことは褒めることといえます。日本では、優秀な人材に対しても、更に成果を出させるために、『こんなことで満足していてはダメ』と発破をかけることも必要でしょうが、インドではまず褒めること、褒めつつ、仕事の進行はしっかり確認することが大切です」(李)

中国では、能力が高い人材を徹底的にひいきする「ひいきのマネジメント」が有効とヘイ・グループでは分析しているが、インドでは「おだてのマネジメント」ということだ。

一方、ベトナムにおいても当然褒めることは必要だが、モチベーションをあげるためには、「まずコミュニケーションをする際の安全性を担保する」ことが重要になる。

「社会主義が背景にあり、トップダウンのやり方に慣れていて、ボトムアップで仕事を進めるやり方に慣れていない傾向が見受けられます。それが原因で、大きな仕事に対して尻込みしてしまうこともよく見られます。加点主義ではなく、減点主義で教育されたために、責任の重い仕事を担った場合、失敗したときのリスクを考えてしまうのではないでしょうか」(遠藤)

筆者がベトナムで人事についてのミーティングに参加した際にもこんなことがあった。リーダークラスの女性従業員が、上司(駐在員)から伝えておいてくれと頼まれていたことを伝えていなかったことについてその上司から指摘されたとき、それまでの大人しい態度から一変して、「ですが、私は正式にそれを伝える権限を委譲されていません」と語気を荒げた場面に出くわしたのである。伝達を依頼されたことは、相手の処遇に関わることだったのだが、正式な権限がないのに、代理で伝えることで彼女に対して良からぬ思いが同僚から寄せられることを恐れていたのであろう。

これは一例にすぎないが、日本人から見ると「少し杓子定規にすぎる」ことがベトナム人従業員にとっては一大事であることも少なくない。モチベーションを高めることは、一般的には「自主性を持って、物事に対処していく」「改善や改革を積極的に行う」ことと捉えられがちだが、「不安を取り除き、仕事に集中できる環境をつくる」ことも、立派なモチベーション向上施策だといえる。特に海外現地法人においてはそうだ。

インドとベトナムという全く違った文化を持つ国における人材マネジメントの一面を紹介してきたが、俯瞰してみると人材マネジメントの根っこにある原則ということでは、実は共通する部分も多い。人事制度などの仕組みを明確にすること、褒めること、人前で叱らないこと、コミュニケーションをする際のリスクを取り除いてあげることは国にかかわらず、日本も含めて、有効な手段になりうる。

また、最初に述べたとおり、それぞれの国においても、人それぞれに考え方や行動様式は異なる。

そう考えると、様々な人々とやり取りをしながらビジネスのゴールに組織を引っ張っていくことが求められる日本人駐在員には、共通に求められる原則を踏まえつつも、場面や相手に応じてフレキシブルに対応できるコミュニケーターとしての度量が今後、更に問われることになるだろう。(文中敬称略)

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プロフィール

塩尻 出穂

ヘイ・コンサルティンググループ アセアン・南アジア 日系企業担当 アソシエイト・ダイレクター

しおじり・いずほ●1965年、山口県生まれ。慶応大学卒。組織変革・組織活性化・人事戦略・人材育成等に関するコンサルティングを提供。日系グローバル企業に対し、日本本社・現地法人双方の視点を踏まえて、組織・人事面でのグローバル化に関するプロジェクト・講演・執筆活動を幅広く行う。

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