
大不況からの突破口!「大前流ニューディール構想」
大前研一の日本のカラクリ
日本は今こそ国家100年の計で都市再生・街づくりに取り組むべきだと語る。その構想の全貌と真意は――。
小川 剛=構成 加藤雅昭=撮影 AP Images=写真
円高・低金利、雇用危機、経営破綻・倒産……。アメリカ発金融危機により、日本の経済は、かつてない深刻なデフレ大不況に陥りつつある。どうすればいいのか? 大前研一氏は、今こそ国家100年の計で都市再生・街づくりに取り組むべきだと語る。その構想の全貌と真意は――。
国力が衰える前にやるべきこととは
アメリカの金融危機や韓国の経済危機を日本で見ていると、ポールソン米財務長官にしても、李明博・韓国大統領にしても、危機を舵取りする為政者の視野の狭さに嘆息させられる。危機の歴史を少し勉強すればわかることだが、危機に際して大きな結果を出した為政者というのは、従来の延長線上にない方向に舵を切っている。要するに思い切ったことをしているのだ。
今の為政者たちは、目の前の現実に泥縄式で対処しているだけ。見えている現象に対して対策を考えるのは凡庸なリーダーである。これが愚かなリーダーになると、今見えていない現象に対しても余計なことをやろうとする。
たとえば誰も路頭に迷っていないのに、国民全員に1人1万2000円もバラ撒こうとする。景気対策というほど日本の景気は悪くない。そもそもこの15年間、統計上はともかく国民のほとんどが景気のよさを実感できたことはなかった。だから今が特別悪いわけではない。それどころか世界の中では、経済情勢は随分ましなほうだ。それを他の国がやっているから、選挙が近いからと無駄金をバラ撒いていたら、本当に日本は左前になってしまう。
国力が衰える前に、この国がやるべきことはほかにある。しかも日本の実力からすれば、割合簡単なことだ。
アメリカの場合は世界中から借金しているから、自分でやろうと思ってもできないことが多い。韓国の場合、経営の意思決定が早いし、計画のスケールが大きいから一見華々しく見えるが、部品や工作機械など肝心要の産業クラスターが育っていないので、やはり自己完結できない。
アナログな製品から最先端のハイテク機器まですべてを自前でつくれる産業基盤、基幹部品や工作機械などの産業クラスターが一通り揃っている国は世界でも数少ない。
そもそもグローバル経済というのは、それぞれの国が得意技を持ち寄ってつくったカラオケセットのようなものだ。カラオケはBGMが流れ、テンポが刻まれ、モニターに表示される歌詞の色が変わるタイミングに合わせて歌えば、誰でもそこそこ上手に歌える。つまりBGMと字幕に合わせれば、どんな国でも経済が回るようにできている。逆にBGMと字幕を外したら、ろくに歌を歌えない国ばかりなのだ。
そんなグローバル経済にあって、(原材料さえ持ち込めば)アカペラで歌う歌唱力を持っているのが日本なのである。アメリカのように世界中から借金して身動きが取れないわけでもない。にもかかわらず、キンコンと鐘が2つ鳴る程度の歌しか今の日本は歌えていないのではないか。
今の日本がなすべきことは何か。日本の突破口がどこにあるのかを考えるとき、私の頭には「都市づくり」というキーワードが浮かんでくる。
大前 研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾
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