職場の人間関係学
2009年 2月 23日

「考える部下」をつくる質問のコツ

一人ひとりが考えて動ける組織をつくるために、コーチングをどう活かせばよいだろうか。

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「セッションを通じて原田さんの重んじる価値は、『顧客視点』『現場』『リアリティ』にあること、そして未来の夢に牽引されて仕事を行っていくタイプであることがわかりました。それが、原田さんが課題を解決する力となるものです。『自分の現場は、いまはこの職場なのだ』『私の目標は、日産のブランド価値を高め、顧客に満足していただくことだ』『そのためには、チームで力を合わせて業務を遂行していかなければならない』という解を、コーチングの中で原田さんは導き出しました。これをふまえた具体的な行動として、まずメンバーと向き合う時間をとると原田さんは決めました。毎週月曜日の午前中を部員とのミーティングに充てることにしたのです」

同時に、ビジョンやスキル、課題など、メンバー1人ひとりのデータベースを作り、これをもとにチームメンバーの育成戦略を立てた。自分自身のコミュニケーションスキルを上げる努力をしながら、チームと自分のビジョンメーキングを行っていった。

原田氏は、当時を振り返りこう話す。

「国内営業の部長で50名も部下を抱えているなんていったら、交渉力も決断力も超一流の凄腕を想像してしまう。

その像と自分とのギャップを一刻も早く埋めなくてはとあせっていました。それが、齋藤さんに、『原田さん、走るのをやめて、歩いて部下の方の顔を見ることから始めたらいかがですか?』と言われて肩の力がすっと抜けたのです。メンバーと向き合って、お互いを理解し合おう。偉い部長のイメージを徹底的に崩して、私にしかできない部長スタイルをつくっちゃえばいいと思えた。私にできない部分は、メンバーの力を借りていけばいいと考えられるようになりました」

それぞれが自分で考えて動くことで会社は変わる

コーチングは2年間続いた。最初の1年は月に4回、うち3回は電話でのコーチング(約40分)、残り1回は対面コーチング(約1時間)を行い、2年目は月2回、ほとんどが電話でのコーチング(約40分)となった。

コーチの役割は「主体者の自発性を引き出すこと」にある。主体者の意欲を高め、持っている才能を目覚めさせる。主体者の視点を変え、リソースを探し、物事を具体化させ、問題を特定する。そのうえで、目標を設定し、自発的な行動へと移させるのである。

齋藤氏は原田氏に、「今日は何を行いましたか?」「何がうまくいきましたか?」と、日々のことを細かく聞き、「うまくやっていますね」「原田さんがいるからこそできたことですね」と、心意気、着眼点をひたすら褒めた。原田氏がつまずいたのは、人に頼むとか、ものを聞いてみるといったほんの小さなことだったと齋藤氏は言う。

本来の原田氏は褒められてパフォーマンスの上がる、明るいキャラクター。齋藤氏は、たとえひとつうまくいかなかったことがあっても、その問題にとらわれて元気を失ったりせず、先に進むよう、部下とどんどん会話をかわすようにと原田氏にメッセージを送り続けた。

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プロフィール

野崎 稚恵

ノンフィクションライター、翻訳家

のざき・ちえ●1967年新潟県生まれ。青山学院大学英米文学科卒業。証券会社のディーラー、トレーダー、雑誌編集者を経て独立。経済、金融、経営分野で活躍中。翻訳本にレイ・クロック自伝『成功はゴミ箱の中に』がある。

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