実践ビジネススクール
2009年 3月 16日

大前研一|利権ありきで邁進する「地デジ完全移行」の欠陥

大前研一の日本のカラクリ

2011年をもってアナログ放送は終了いたします―。すでにアメリカでは、財政難を理由に延期が決定された。では日本は?

2011年をもってアナログ放送は終了いたします―。連日テレビ各局で、大量のCMが流される「地上デジタル放送への完全移行」。すでにアメリカでは、財政難を理由に延期が決定された。では日本は? 大前研一氏は、実現など到底不可能と説く。その真意は。

大量のテレビCMで国民を洗脳する!?

地上波のテレビジョン放送が、アナログ方式からデジタル方式へ完全移行するまで3年を切った。

2006年に全都道府県で地上デジタル(地デジ)放送の受信ができるようになり、現在はデジタル波とアナログ波のサイマル(同時)放送が行われている。それを現行のアナログ放送は11年7月24日をもって終了・停波とし、デジタル放送だけになるから準備はお早めに―という話なのだが、どうにも問屋が卸しそうにない。

結論から言えば、11年の完全移行はまず不可能である。後述する理由で見込みはどんどん薄れているのに、ここにきて「2011年をもってアナログ放送は終了いたします」というテレビCMが大量に流されている。政府が号令を発して動き出した計画は、何があろうと止まらないのが典型的な日本のカラクリだが、地デジの問題はそれを象徴している。

そもそも地デジ導入は、01年7月に改正施行された電波法に基づく。テレビ放送デジタル化の世界的な流れを加速させたのは、NHKが独自開発したハイディフィニションテレビ(HD TV=高精細度テレビ)だったという側面もあり、当時は画質の向上や電波障害の解消、マルチメディア化や多チャンネル化など、地上波をアナログからデジタルに切り替えるメリットを学者連中が盛んに吹聴した。

しかも旗振り役の総務省がデジタル化の推進は国策とばかりに、いつの間にか「Eジャパン構想」の重点計画の一部に組み込んで絵図を描いてきた。そこに放送、通信、家電など、デジタル化に伴う需要創出で一儲けを企む業界や企業が相乗りし、加えて観光客誘致を目論むお調子者が500億円もかけて「第二東京タワー」(正式名称は東京スカイツリー)を建てると言い出すなど、まさに官民あげてのお祭り騒ぎで邁進してきたのである。

しかし、地デジ導入が決まった当時とは情勢がまったく様変わりしてしまった。その変化は今後3年でさらに進行すると予想される。総務省が思い描いた未来は到底やってきそうになく、今度ばかりは方針を大転換せざるをえないだろう。

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プロフィール

大前 研一

ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長

1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾

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