達人のテクニック
2009年 4月 14日

元リーマン社員が転職してきたら―黒木 亮

「よりたくましく働く」ための全課題25【12】

リーマン・ブラザーズ東京支店にいた約1300人のうち、約1100人が野村證券に転籍した。

元リーマンと野村HD、平均年収を比較すると……
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元リーマンと野村HD、平均年収を比較すると……

リーマンに限らず、外資系投資銀行には、抜群に優秀な社員たちが少なからずいる一方で、能力もなく、常識をわきまえてもいないが、自分が関わっている市場の相場がいいため、1億円を超えるようなボーナスをもらって勘違いしている若手社員もいる。

外資系投資銀行は、儲けた者が勝ち残っていくジャングルのような職場で、正々堂々と戦って実力で勝ち残ってきたライオンもおり、出てきて他人の獲物を横取りするハイエナもおり、たまたま周囲にバナナがたくさんなっていて、労せずして生き残ってきたチンパンジーもいる。これほど人材が千差万別の組織もなく、結局のところ、個々人の力量を見極めて処遇するしかない。

日本では以上のような状況だが、欧州やアジアでは、話がまったく異なっている。欧州でもアジアでも、リーマン社員たちが合流したあとの新組織の幹部の大半はリーマンの社員たちが占め、野村の社員たちは、リーマン社員による面接を受け、処遇を決められている。1、2年のうちには、元々野村にいた社員たちが首を切られてもおかしくない。要は、リーマンの欧州・中東・アジア部門の買収を推し進めた柴田拓美副社長は、海外の野村の社員をリーマンの社員と総入れ替えする決断をしたのである。忠誠心など何の役にも立たない近未来の日本を暗示するような話である。

今回の買収の成否は、今後、リーマンの社員たちが野村に定着するかどうかにかかっている。しかし、投資銀行は結局はネーム(すなわち看板)であり、果たして優秀な社員たちが野村證券という国際的に一流半か二流のネームに留まるだろうか? ケミカル銀行がチェース・マンハッタン銀行を(実質的に)買収したとき、新銀行名はネームのよいチェースにし、新チェースがJPモルガンを(実質的に)買収したとき、投資銀行部門はネームのよいJPモルガンを使うことにした。本気で世界的投資銀行になる気があるなら、日本国内も含めて野村の名を一切捨て、リーマン・ブラザーズに社名変更するべきではなかったか?

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プロフィール

黒木 亮

1957年、北海道生まれ。英国在住。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。
都市銀行、証券会社、総合商社に23年余り勤務し、国際協調融資、プロジェクトファイナンス、貿易金融など多くの案件を手がける。
2000年『トップ・レフト』でデビュー。『巨大投資銀行』『青い蜃気楼~小説エンロン』など著書多数。最新作『エネルギー』(上・下巻)が早くもベストセラー邁進中。

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