実践ビジネススクール
2009年 4月 20日

大前研一|虐げられるサラリーマン大逆襲への道

その手があったか!誰も豊かになれない日本の非常識

同じ大学を出たのに20年後の年収は「4倍以上」も違う。こんなことがまかり通っているのは、実は「日本」だけなのだ!

また、こんな話もある。友人のジャック・ウェルチ氏(元GEのCEO)は、「暇になると自分は従業員をクビにする」と言う。実際、GEは毎年15%ずつクビにしていた。その理由を聞くと「緊張するから」と言う。誰をクビにするか、そんな嫌なことを考えると自分も緊張するし、クビにならないように社員も緊張する。生き残った社員はありがたみを感じて一生懸命仕事をする、というのだ。

そのかわり、クロトンビル(ニューヨークにあるGEの企業内ビジネススクール)の社内教育の素晴らしさはつとに有名で、こぼれてくる人材を狙ってGEの周りにはリクルーティング会社のリムジンがグルグル回っている、と噂されたほどだ。かつて米「FORTUNE」誌で、アメリカの経営トップはGEとマッキンゼーが東西の横綱、と特集したが、この教育あればこそなのである。

日本の多くの企業では雇用が保証され、あまり役に立たない人が何となく役職を持ち、何となく高い給料をもらっている。それがどれだけ若い人材の道を塞ぎ、組織の硬直化を生むことになるのか、経営者は真剣に考えるべきだ。

たるんだ雇用制度で人件費を抱え込む一方、怠慢にしているのが人材育成。広告宣伝に売上高の5~6%を使っている会社はざらにあるのに、売上高の0.1%を管理職トレーニングやスキルアップなどの人材教育に使っている日本企業など見たことがない。少数精鋭にすれば当然、1人当たりの教育費用は増やせるのに、全員におざなりな教育を施しているから、不況になると真っ先に削減の対象になるのが教育費、という悪循環だ。

それではいけない、「名札(社名や役職名)」ではなく「値札(商品価値)」がつく人生にしなければ……と気づいた人は、私が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学院大学(BBT)やボンド大学MBAコース、経営塾、問題解決学のコースなどにやってくる。しかも彼らの8割以上が、入学金や授業料は自己負担なのである。

自由主義社会の競争の中で生きている限り、所得格差は歴然と存在する。そして所得格差がある世界で生き抜くことを前提にすれば、会社に任せていても何もやってくれない。より高みに上れるように自分で努力するしかない。

人生は長い。サラリーマン人生だけで40年近くある。もし情報不足で不公平な業界を選んだとしても、死に物狂いで自分に投資すれば、職種や業種の壁を乗り越えられる。30歳前後なら乗り換えは十分に可能だし、1つの会社で20年以上経過したなら、その世界に留まり、とび抜けた存在となるために自己投資をしたほうがいい。すぐに結果が出なくとも、常に高みを目指して頂いただきを乗り越える努力を続ければ、必ず強くなれる。他人を羨んだり妬んだり、肩叩きに怯える必要など、なくなるはずだ。

今、日本で一番不足しているのは、グローバル人材である。世界中に広がった組織の中で、縦横に活躍できる力をつけておけば、引く手数多である。この場合には業種の壁もそれほど大きくないし、経験がものを言う世界であるから転職で飛躍する機会も多い。

サラリーマンが豊かになれない日本のカラクリとして、「税の不平等」の問題もある。各種費用が自動的に差し引かれる源泉徴収の天引きシステムや、俗に「541(トーゴーサンピン。きちんと納税されている徴収割合が、サラリーマンだと丸ごと全部の10割で、自営業者なら5割、農家3割、政治家1割という意味)」といわれる格差など、日本の税体系の中では、サラリーマンだけが著しく虐げられた存在となっている。

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プロフィール

大前 研一

ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長

1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾

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