
大前研一|虐げられるサラリーマン大逆襲への道
その手があったか!誰も豊かになれない日本の非常識
同じ大学を出たのに20年後の年収は「4倍以上」も違う。こんなことがまかり通っているのは、実は「日本」だけなのだ!
小川 剛=構成 若杉憲司、宇佐見利明=撮影
そもそも日本は、所得税や法人税の税率が世界一高い。北欧諸国のように貯金ゼロでも老後の心配をしないでいい超福祉国家ならわかるが、日本政府は年金をきちんと支払う約束すら守れないでいる。
累進課税にしても、要は収入の多い人からたくさんむしり取ろうという話。どんなに一生懸命働いて給料が増えても、手取り自体はほとんど変わらないのだから、これほどインセンティブの働かない国はない。
ロシアのプーチン政権や、かつてのアメリカ・レーガン政権時代には、「フラットタックス」を導入したり累進制を緩和した。税率を下げても国の税収は増えた。インドネシアでは「刀狩り」のように過去を問わないから今年から正直に申告しろ、とムルヤニ財務大臣が施策を行った。主として華僑のものと思われるが、地下に潜っていた金がどっと出てきて、税収は50%増。「税率を下げると税収が増える」「過去を問わない刀狩り」など、世界の事例から納税者の心理を日本ももっと勉強すべきだろう。
源泉徴収を廃止して「青色申告」に移行せよ
税制の見直しについては私もさまざまな提言をしてきたが、結局は議論百出でアイデアコンテストになってしまい、なかなか現実の改革には結びつかない。そこで「道州制」のような新しい統治機構が誕生するときに、抜本的な改革をするべきだと思っている。
私が提案している究極の税体系は、いたってシンプルなもの。「付加価値税」と「資産税」の2本だけにするのだ。
その内容はこうだ。まず、産業基盤や雇用をつくる責任を持つ道州が、付加価値税を徴収する。一方、市町村を再編し安全・安心な生活基盤をつくる単位を30万人程度のコミュニティーとし、そちらで資産税を取る。
付加価値税は、モノやサービスを買った人(個人、法人)が支払う。日本のGDP(国内総生産)500兆円というのは、日本国民が年間トータルで生み出した付加価値が500兆円ということだから、付加価値税が5%なら25兆円、10%なら50兆円となる。国民の声を聞きながら、5~10%の間で調整すればいい。道州によって若干増減を調整してもいい。
一方の資産税は、資産を持っている個人・法人が自分の暮らしているコミュニティーに対して納付するもの。日本全体で不動産(土地)関係の資産が1500兆円、金融資産が1500兆円あるから、資産税を時価評価の1%にすれば、両者を合算して30兆円ほどの税収となる。
資産を持っている人が資産税を払うという原則に立てば、相続税という概念は要らなくなる。親から資産を受け継げば、自動的に資産税も継承・存続するからだ。
生み出された付加価値ごとに税金をかける付加価値税を導入すれば、所得税も法人税も必要なくなる。
現行の法人税は、“工夫”次第で払わずに済むようにできていて、かつて日本で一番土地を持っていた国土計画や世界中で商売している大手商社は、ほとんど法人税を払っていなかった。工夫をすれば税が大幅に軽減される、というシステムを変えなくてはならない。しかし付加価値は、売価から仕入れコストを引いた数字できっちり出せるから、付加価値税にすればイカサマのような創意工夫が入る余地はなくなる。
大前 研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾
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