新・会社論
2009年 5月 13日

「コーポレートブランド」から「商品ブランド」へ

日本企業はコーポレート・ブランドを大事にし、欧米企業は商品ブランドを大事にするといわれてきた。

厳しい不況下、内需志向、高付加価値のモノづくりへというビジネスモデルの転換が予想されている。この変化にともない、日本企業のマーケティングにおける転換も大きく促進されると筆者は説く。

メーカーの指導の下
系列化された各業界の商業組織

空前絶後と呼ばれた現在の不況も、各国、歩調を合わせ集中した経済再生政策が打たれ、今では市場はいずれ元の需要基調に回復することが期待されている。もっとも、そうして回復した市場は、これまでとは違った姿での競争になるだろうともいわれる。各業界、各社ともに、厳しい経済状況のなかで、新しい時代のための新しいビジネスモデルを目指しているからだ。雑誌記事などを見ていると、海外市場志向から内需志向へ、モノづくりもより高付加価値のモノづくりへという転換が予想されている。私は、わが国企業のマーケティングにおける転換も大きく促進されるのではないかと思う。

日本企業はコーポレート・ブランドを大事にし、欧米企業は商品ブランドを大事にするといわれてきた。日本の消費者は、商品名に会社名が付くことが大事だと考えているのだろう。その証拠に、P&Gは、日本では商品宣伝の最後には必ず社名を出している。同社は、世界では商品名に加えてP&Gという会社名を出すことはないにもかかわらず、である。もちろん、最初から日本の消費者が商品名に会社名を付けることを好んでいたというよりも、いわば企業と消費者との共同作業によって生まれてきたわが国の習慣・伝統なのだろう。では、どうしてそういう習慣が生まれたのだろう?

わが国では、アメリカなどと違い、昔から商業組織が発達していた。戦後、大手消費財メーカーが、大量消費に対応して大量商品の供給を図ったとき、まずは既存の商業組織を利用することを考えたのは自然の流れだ。パナソニック、資生堂、トヨタ自動車、キリンビール、ヤマハ、コクヨ、花王といったわが国の有力消費財メーカーはことごとく、各業界の既存商業組織を、自分たちの主導権が発揮できるような形に再編成していった。電球や蛍光灯を売っていた小さな電器店が、冷蔵庫や洗濯機やテレビを陳列する大きいお店に変貌していった。パナショップ、資生堂化粧品店、トヨタディーラー、ヤマハの楽器店といった私たちに馴染みのある店は、メーカーの指導の下に系列化され誕生したものである。そして、商業組織の活用が巧みであったメーカーが各業界のトップ企業となり業界の覇権を握ることになった。

1 2 3 4 次のページへ
プロフィール

石井 淳蔵

流通科学大学学長

いしい・じゅんぞう●1947年、大阪府生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。神戸大学大学院経営学研究科教授などを経て、2008年4月より、流通科学大学学長。専攻はマーケティング、流通システム論。著書に『ブランド』『マーケティングの神話』『営業が変わる』などがある。

Feedback
この記事を 全部読んだ
  一部だけ読んだ
  あまり読まなかった
内容は とても参考になった
  まあ参考になった
  参考にならなかった
 
サイト内検索
プレジデントのおすすめ記事
特集
経営者たちの40代

武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。

朝礼のヒント

絶好調企業は必ず効果的な「朝礼」をしている!レポートはこちらから

プレジデント最新記事