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2009年 5月 24日

21世紀の「大和絵」は粋でカッコイイ

《Y》Yamato-E:ビジネスマンのための「現代アートABC」【第26回】

日本の古典の中に、自分の表現を加えてパワーアップさせる手法をとってきているアーティスト達がいます。

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金雲がたなびく平安時代当時の大和絵は、貴族のために描かれたものだったので、そこに武士が登場するということは、すでに時空を超えています。さらにサラリーマンやOLが出てくると、時代のトンネルを抜け、すべてが並列に出てくる不条理な感覚がじわじわと押し寄せます。時代劇的といいましょうか、すべてがまざって登場するような感じでしょうか。それでいて、建物や衣服は詳細に描かれていることもあって、リアルな人間が存在しています。山口晃の描く世界は、真面目に感心するだけではなく、むしろ笑って楽しむべきもの、でしょうし、自分の知っている世界へ作品を引きよせて理解して良い作品なのです。

山口晃 厩圖2004©YAMAGUCHI Akira Courtesy Mizuma Art Gallery 撮影=宮島径
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山口晃 厩圖2004©YAMAGUCHI Akira Courtesy Mizuma Art Gallery 撮影=宮島径

古今東西の名画に自らが扮してしまう作風の森村泰昌も「信貴山縁起絵巻」の登場人物に自らが扮した掛け軸のシリーズを発表し、度肝を抜きました。「信貴山縁起絵巻」の中でもっともカッコイイ場面となる、寺の中興の祖である命蓮の法力を存分に示す「延喜加持の巻」に登場する護法童子に扮しています。剣の衣を風になびかせ、輪法を転がしているあの姿ですね。この作品で森村さんは、さらに凝っているのは掛け軸の表具です。「信貴山縁起絵巻」の護法童子を題材にしているために、雲や輪の意味を表具の模様に秘めており、さらに奥行のある作品となっています。

私は山口さんや森村さんには、もっともっと日本の古典の名画を使って、新しい作品を作ってもらいたいなあ、と思っています。しかし、その古典を私達が知らないというのが大きな問題なのです。「見立て」も「本歌取り」も、その元となっている作品が広く知られている必要があります。残念ながら16世紀のイタリアルネッサンス期の絵画や19世紀の印象派や後期印象派はすぐにわかっても、日本の名画は誰でも知っているという現実ではないのが今の日本です。

現代アートの作品で、日本の古典を題材としていても、肝心の日本人がそれを見ても理解できないとしたら、それは大きなデメリットです。私達は知らず知らずのうちに、日本文化よりもイタリア文化やフランス文化に馴染みのある日本人になってしまっています。現代アートは、実は日本文化の大事な継承者でもあることをぜひ知っていただきたいと思います。もちろん私たちも、日本の古典の名作をもっともっと学ばなければなりません。

外国の人々も素晴らしさに驚いた山口さんや森村さんの作品を見て、温故知新という言葉どおりに、日本的文化の精神はそのままに、カッコイイ新しい大和絵が世界を席巻する日は近いのです。幅広い作風で知られるお二人ではありますが、大和絵の後継者のような作品群は、ぜひ日本の美術館がコレクションし、平安時代の作品から現代の作品への繋がりを見せて、日本美術の素晴らしさを海外へ大きくアピールできれば、と強く願っています。

世界の人々が見たくなるようなコレクションというのは、単純に時代を切り取るものではなく、現在に繋がっていることを見せて、現代に生きる日本人アーティストの作品を知らしめてこそ、博物館とは違う、生の面白さを印象付けると思うからです。

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プロフィール

山口 裕美

Yumi Yamaguchi●アートプロデューサー&アートジャーナリスト。アーティストをもっとも近くから応援するその活動から「現代アートのチアリーダー」の異名を持つ。ウェブサイト、トウキョウトラッシュを主宰。アート系NPO法人芸術振興市民の会(CLA)理事。エレクトロニックアートの祭典「eAT金沢99」の総合プロデューサー、2004年ARS ELECTRONICA ネットビジョン審査員。著書に「TOKYO TRASH web the book」(美術出版社)、「現代アート入門の入門」(光文社新書)、「COOL JAPAN-疾走する日本現代アート」(BNN新社)、「芸術のグランドデザイン」(弘文堂)、「Warriors of Art」(講談社インターナショナル)、最新刊「The Power of Japanese Contemporary Art」(アスキー)がある。

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