
【3】「新・日本型金融道」で世界を制す
三井住友銀行:業界標準をつくる特殊部隊の秘密
「大切なことは顧客企業の成功。そのためには誰とでも組んで“チームアップ”せよ」
ジャーナリスト 宮尾 攻=文 的野弘路=撮影
三井住友は三重県内に営業拠点がない。日本土建を担当するのは名古屋法人営業部だったが、これまで少額の融資を実行しているにすぎなかった。メーンバンクである三重県の地銀、百五銀行との絆が強かったのである。
しかも、別のメガバンクがすでに相談を受けている。三井住友は2カ月ほどの後れを取っていた。急遽、CA本部名古屋の部長、宮下広一、服部俊樹が中心となり、CA本部のフィナンシャルスポンサー部長の小森忠明のほか、建設業担当の業種グループ、担当である名古屋法人営業第一部、さらにはストラクチャードファイナンス営業部によるチームを組成。名古屋が日本土建の窓口となりつつ、東京の本部は審査部と交渉するという多角的な取り組みが始まった。
「我々は専門部隊が直接的に顧客企業と話し合うという形態をとっていました。営業店から専門部署につなぐという他の銀行の方式に比べ、ワンクッション少なかったので、その分、作業は相対的に迅速でした」(宮下部長)
このスピーディーさこそ、日本土建が銀行に求めていたものだった。結局、「初めに話がきてから、『うちがMBOに関連する融資をやりましょう』とお答えするまで1カ月弱でした」というのだから、確かにスピード感がある。
日本土建にとっても、オーナーである田村会長にとっても、MBOによる非上場化は失敗のリスクすらある、きわめて重たい経営戦略だった。それを三井住友が一気呵成のソリューション営業でサポートし、MBOは成功、日本土建の構造改革は大きく進展した。田村会長は今、こう述べている。
「原則論に囚われた銀行の貸し付け態度が、私はあまり好きでないんです。融資の決定までに時間がかかるのが一番嫌。その点、三井住友はよかった。気持ちよく借り入れもできた。伸びるなと思いましたよ。これからも長い付き合いをしてもらいたいというのが今の気持ちです」
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宮尾 攻
みやお・こう●金融専門誌などを経て経済ジャーナリストとして独立。『「IYバンク」で何が変わるか』『日本銀行の研究』『証券市場は死んだのか』『国債のカラクリ』『ペイオフ預金消失』など著書多数。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
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