
【3】「新・日本型金融道」で世界を制す
三井住友銀行:業界標準をつくる特殊部隊の秘密
「大切なことは顧客企業の成功。そのためには誰とでも組んで“チームアップ”せよ」
ジャーナリスト 宮尾 攻=文 的野弘路=撮影
「完全な組織はない。潰すときには潰すべきだ」
三井住友銀行頭取 奥 正之
――CA本部創設から3年近くが経ち、手応えとして何合目まできた感じですか。
奥 そういうことは考えたことがない。私たちははっきりした頂のある山を登っているわけではないからだ。われわれはゴールのないレースをしている。しかし、半年、四半期ごとにCA本部の報告説明は受けている。その際、金額から説明するな、と言っている。重要なのは金額ではない。処理した案件数だ。現在、処理件数は半年で200件ほど。対応中の件数はその3倍近くはある。あとは、提案、そして問題解決力、要するにスピードが大切だ。
――問題意識の根底には何があったのですか。
奥 時代の変化は銀行よりも顧客のほうに早く訪れているということだ。そのような顧客の動きを誰がきちんと見ているのか。本部の人間がじっと動かずにいて、それがわかるものではない。しかも、従来のように法人営業部門というフロントだけでは対応しきれない。そこで、本部の人間も現場に行って、様々な情報を収集し、それで銀行のレスポンスがスピーディーになれば、銀行に対する顧客のニーズは格段に広がる。
――しかし、法人営業とCA本部との間で、軋轢はあったでしょう。
奥 頭ではダブルフロントの良さを理解しても、他の部門に収益が奪われかねないという恐れを抱くのは無理のないことだ。だからこそ、情報、ナレッジ(教育)、価値と同様に、収益も分かち合えばいい。プロフィットシェアリングだ。結局、何をモチベーションにするかという問題であり、顧客に喜んでいただいたという価値観が重要だ。そのためにも顧客とのバリューの共有化が欠かせない。
――それではCA本部を創設した意味はあると。
奥 もちろん。顧客に対して銀行が隙間なく対応し、向上していくために、CA本部は必要な組織だ。しかし、まだ完全というわけではない。人間がやっていることである以上、欲とか性さがが入ってくることも避けられず、組織がその目的を失うことすらある。だから、私は経営企画部門にしばしば言っている。「完全な組織はない。潰すときには潰せ」と。
宮尾 攻
みやお・こう●金融専門誌などを経て経済ジャーナリストとして独立。『「IYバンク」で何が変わるか』『日本銀行の研究』『証券市場は死んだのか』『国債のカラクリ』『ペイオフ預金消失』など著書多数。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
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