
GM破綻で潤う「時給9万円」の弁護士たち
堀田佳男の「オバマの通信簿」【12】
政府はGMが競争力のついた自動車メーカーとして生まれ変わることを期待する。
文=堀田佳男
「ゼネラル・モーターズ(GM)の倒産はアメリカ経済にいい結果をもたらすかもしれない」
ウォールストリート・ジャーナルは6月1日、悲観論が渦巻くGM関連ニュースの中で、一歩踏み込んだ楽観論の記事を載せた。
倒産は短期的には痛打に違いないが、GMで働くエンジニアやデザイナー、また製造ラインの従業員はオバマ大統領が力を注ぐ環境ビジネスへ鞍替えすることが十分に可能であると書いている。しかも倒産といってもGM本体がなくなるわけではない。連邦破産法11条(民事再生法)によってスリム化され、およそ3カ月後には新生GMが姿をみせることになる。
「新しいGMが世界中の自動車メーカーと競いあって勝ち上がってくるという絶対の自信がある」
オバマ大統領は過剰とも思える楽観的なコメントをだした。
そもそも、大企業といわれ続けてきたGMは、もはや70年代後半のような圧倒的優位性がない。いまでもアメリカ製造業の雄であり、部品メーカーなどの取引企業は1100社におよぶが、企業の力がピークに達した79年に比べると規模は大幅に縮小している。
79年当時のGMは国内だけで約62万人の社員を抱え、アメリカのGDPの実に4.1%を稼ぎだす化け物企業だった。ところが現在、国内社員数は8万8000人にまで減り、GDP比も1.5%にまで落ち込んでいる。
私は80年代からデトロイトを何度か訪れて自動車産業を取材し、GMが破産することは時間の問題であると思ってきた。破産法11条の申請は05年暮れ以降、いつ発表があっても「自然」とさえ考えていた。経営陣は赤字を出し続けても硬直化したマネジメント構造を変えられず、昨年はとうとうトヨタに生産台数を抜かれた。GMの欠点を私なりに3点に集約すると次のようになる。
一つは全米自動車労組(UAW)との頑迷なまでの契約である。退職者の年金や保険まで支払う「レガシーコスト(負の遺産費)」といわれる契約がGMの動きを鈍らせていた。
二つ目は「フリーズド・ミドル(凍結した中間管理職)」が変革の動きを止めていた。下からの不満は企業上部に届かず、上からの指示は企業の末端にまで届かない傾向があった。
三点目はUAWと結んだ部門ごとの契約により、トヨタのような垣根を越えたチーム作りができにくい体質があった。そのため次世代を引っ張る人気車種を作り出せなかった。こんな状況下での倒産が本当にアメリカ経済にとっていいことなのだろうか。
堀田 佳男
1957年東京生まれ。早稲田大学 文学部を卒業後、ワシントンDCにあるアメリカン大学 大学院国際関係課程修了。大学院在学中に読売新聞ワシントン支局で1年間助手を務める。卒業後、米情報調査会社に勤務。アメリカの日刊紙の日本語ダイジェストの執筆・編集に携わる。永住権取得後、1990年に会社を辞して独立。以来、ジャーナリストとして政治、経済、社会問題など幅広い分野で精力的に執筆活動を行っている。25年の滞米生活後、2007年春帰国。
著書に『大統領はカネで買えるか?』(角川新書)『大統領のつくりかた』(プレスプラン)など。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
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