
【1】「強いものをより強く」戦略で逆風に勝つ
三菱電機:営業利益率総合電気1位の強さに迫る
経済動乱時でも「営業利益率5%以上」の旗を掲げる三菱電機。地球温暖化対策事業の拡大を打ち出し、この荒波に向かう。
経済ジャーナリスト 岸 宣仁=文 川本聖哉=撮影
下の図を見てほしい。研究所から三田へ、逆に三田から研究所へ、頻繁に情報の交換が行われ、その都度、最適な研究開発体制が組まれるが、その橋渡し役を担うのがリエゾンマンという三菱電機独特のスタッフ制度なのである。
企業の中央研究所は本来の役割を終えた、といわれて久しい。市場が成熟化するにつれて、中央研の中だけで研究者が自己満足に陥る独りよがりの研究を続けていても、消費者に受け入れられるような製品はもはや生まれない、ということを示唆する鋭い分析であった。ITバブルの崩壊を受け、いち早く構造改革に着手した三菱電機は研究所と製作所の壁を一気に低くした。縦割りに陥りがちな組織の弊害を取り除き、そこに横串を刺すのがリエゾンマンであり、市場が何を求めているかを追求する点で多くのシナジー効果を生んでいるのは確かだろう。
リエゾンマンは、各研究所から全国に約30ある製作所に兼務の形で派遣されるスタッフを指し、全研究所の所員約2000人のうち部長級の40人がこの肩書を持つ。ここではリエゾンマンの一人、谷周一(51歳)に登場してもらおう。
谷は先端技術総合研究所(兵庫県尼崎市)の機械システム技術部部長を務めるが、06年4月からエレベーターやビル管理システムを手がける愛知県・稲沢製作所を兼務するリエゾンマンの辞令を受けた。1カ月に3~4日の割合で製作所に足を運んで情報収集に努めるとともに、2カ月に一度は先端総研と製作所の連絡会議を開き、連携を密にしながら新たな事業戦略の構築を目指している。
「従来、研究所は象牙の塔のような感じで、縦割りの組織の中で自律分散型の色彩が強くありました。それでは技術革新の激しい今の時代に勝ち残っていけませんし、役に立つ研究所になるには製作所との連携がいかに大事かという考えからリエゾンマンが生まれたと思います。
製作所にしても研究所をうまく活用していきたいのは当然で、お互いのシーズとニーズをマッチングさせ、将来に向けたロードマップ(工程表)を共通化してシナジー効果を高める努力が求められる。目標のはっきりしたロードマップの作成にリエゾンマンがひと役買っているのは確かで、全体を見通せるようになってわれわれ個別の動きがよくなり、無駄がなくなっているという感じがします」
部長級が対象になるリエゾンマンの年齢は50歳前後に集中する。ほぼ同じ年齢の仲間同士が、比較的フランクに話し合える雰囲気が醸成されたことも、社内の「連携」をより強固なものにしている。
構造力学が専門の谷にとって、機械に関する要素技術では全方位の連携を取らざるをえない。そのため、彼が部門長を務める機械システム技術部には、「同僚のリエゾンマンから頼まれてやった案件が年間10件ぐらいある」そうで、そのうちの一つ、気流制御技術の分野で大きな成果に結びついた「連携」があった。(文中敬称略)
岸 宣仁
経済ジャーナリスト
きし・のぶひと●1949年、埼玉県生まれ。東京外国語大学卒業後、読売新聞社入社。旧大蔵省、旧通産省、日本銀行などを担当して独立。著書多数。近書に『デジタル匠の誕生』(小学館)がある。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
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