新・会社論
2009年 6月 11日

【2】「強いものをより強く」戦略で逆風に勝つ

三菱電機:営業利益率総合電気1位の強さに迫る

「1人のホームランバッターより、ヒットを打てる何人もの人材を集めて地道に取り組むほうが成果が上がる」

「霧ヶ峰」を支えるパワー半導体の性能

三田製作所で念入りに出荷検査されるカーナビゲーションシステム(写真上)。「霞ヶ峰には“見える省エネ”であるECOモニターが付いています」と静岡製作所の原正一郎所長は語る(写真中)。新・人感ムーブアイは省エネ意識の高まりから2007年発売後、爆発的に売れた(写真下)。
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三田製作所で念入りに出荷検査されるカーナビゲーションシステム(写真上)。「霞ヶ峰には“見える省エネ”であるECOモニターが付いています」と静岡製作所の原正一郎所長は語る(写真中)。新・人感ムーブアイは省エネ意識の高まりから2007年発売後、爆発的に売れた(写真下)。

「霧ヶ峰」というブランドには、家庭用ルームエアコンの代名詞のような響きがある。1967年の発売というからすでに40年余の歳月が流れたが、その間、センサー技術や省エネ技術を駆使して消費者の求める性能を実現してきた。

「新・人感ムーブアイ」と名付けられた新製品は、ヒトの動きに合わせて温度や空調範囲を調節できるのが特徴で、無駄のない省エネ効果を最大の売り物にしている。単に部屋を冷やしたり、暖めたりするだけと考えられていたエアコンが、ここまで進化してきたのはセンサー技術などの発達によるところが大きいが、ここに至る道程は決して平坦ではなかった。

エアコンをはじめとする空調製品の主要生産拠点・静岡製作所の原正一郎所長は、ライバル企業との闘いも含めた苦労のほどをしみじみと語った。

「センサー技術と気流制御技術を融合させたわが社のエアコンですが、初めはなかなか消費者に受け入れてもらえず、過去10年ぐらい苦労の連続でした。07年に出したムーブアイが大ブレークして、やっと留飲を下げたところですが、ほっとしたのも束の間、08年になって同業他社が真似をした製品を出してきた。

うちのムーブアイは赤外線センサーを使って、ヒトが寒く感じるか暖かく感じるか体感温度を感知できるのが特徴ですが、他社のは焦電センサーといってヒトがいる状態をとらえるだけです。いってみれば、わが社の技術の半分くらいの機能しかありませんが、すぐに真似されてしまうのはつらいところですね」

とはいえ、07年に新機種がヒットしたこともあり、世界のマザー工場である同製作所はタイでの生産の一部を国内に移管し、製造から出荷までの時間を短縮する措置を取った。増産体制も奏功してか、08年7月のエアコン生産は前年同月に比べて2倍に増加した。原はエアコンで高いシェアを確保してきた要因として、ブランド力とコアの技術力を挙げ、

「これらの強さのベースには、次のような流れがあります。大きくいうと総合電機メーカーとしてシナジーがあり、そのシナジーにはいろいろな製品を生み出す製品シナジーと、人工衛星から半導体までいろいろな要素技術を手がける技術のシナジーがある。三菱電機には歴代の社長が品質、品質といってきた品質第一主義の文化、小集団活動を活発に進めてきた現場力があり、これらがブランド力の強化につながっていると思います」

と台頭するアジア企業との闘いが熾烈な白物家電でありながら、三菱電機が志向するモノづくりの差別化戦略を語気を強めて語った。

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プロフィール

岸 宣仁

経済ジャーナリスト

きし・のぶひと●1949年、埼玉県生まれ。東京外国語大学卒業後、読売新聞社入社。旧大蔵省、旧通産省、日本銀行などを担当して独立。著書多数。近書に『デジタル匠の誕生』(小学館)がある。

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