
【3】「強いものをより強く」戦略で逆風に勝つ
三菱電機:営業利益率総合電気1位の強さに迫る
野間口が、「強いものをより強くするという、わが社再生のカギの一つだった」と指摘する事業に、パワー半導体がある。
経済ジャーナリスト 岸 宣仁=文 川本聖哉=撮影
「国際標準は知財戦略の柱の一つ」といい切る野間口だが、その知財戦略を三菱電機の経営の中に根付かせていったのもまた、社長時代の彼であった。事業部門-研究開発(R&D)部門-知財部門が1つに融合した姿を「三位一体経営」と呼び、同社の舵取りをこちらの方向に誘導してきた。知財部門を社長直轄にしているのもこの会社の特徴で、
「例えばこの事業を強化したいとなると、そのためのR&Dの課題は何か、それではこういう形で先行的に開発しようとなります。そこで、その事業に関わる知財を分析して、こういう課題があるなと明確な答えが出せるようになりました。今は攻撃にしろ防御にしろ、非常に前向きになり、経営戦略の一角を担ってくれていると自負しています」
と、三位一体経営が浸透し始めていることに自信を見せた。
そして、今日「VI-AD」に代表される三菱電機のスローガンも三位一体経営から派生したものであり、名付け親も野間口である。このVI-AD戦略は、流行り言葉となった「選択と集中」と同義語のように聞こえるが、本人の口からは異なるニュアンスの答えが返ってきた。
「私は社長時代に選択と集中という言葉はあまり使わず、強いものをより強く、を口癖にしていました。こうすればこう脱皮できる、こう飛躍できるという視点で技術を深掘りし、事業を大きくすることによって新たなチャンスが生まれる。その結果として、新しく事業を起こすもの、あるいは撤退するものの選別も、よりはっきりしてきたわけです」
そう語る野間口が、「強いものをより強くするという、わが社再生のカギの一つだった」と指摘する事業に、パワー半導体がある。
省エネ効果は原子力発電一基分
半導体と聞くと、DRAMやフラッシュメモリーを思い浮かべるが、それとはまったく異質なパワー半導体と呼ばれる製品がある。電圧の上げ下げや交流から直流への転換のほか、電流の流れをきめ細かく制御することのできる半導体で、電力を効率よく使えるため“省エネ半導体”ともいわれる。
三菱電機は03年4月、LSI事業を日立製作所と統合してルネサス テクノロジを設立した。しかしながら、省エネ効果の大きい電力制御用のパワー半導体は環境意識の高まりを背景に、各事業との相乗効果が大きいと判断して社内に残した。福岡県福岡市にあるパワーデバイス製作所がその生産拠点で、ここ数年、生産は右肩上がりの成長を続けている。
そんなパワー半導体には、DRAMなど一般の半導体とは似て非なる特徴がある。製造の過程でチューニングと呼ばれる最適化への微調整を必要とし、それには匠の技に支えられた数多くのノウハウが存在するのだ。
岸 宣仁
経済ジャーナリスト
きし・のぶひと●1949年、埼玉県生まれ。東京外国語大学卒業後、読売新聞社入社。旧大蔵省、旧通産省、日本銀行などを担当して独立。著書多数。近書に『デジタル匠の誕生』(小学館)がある。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
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