
大前研一|本物の道州制、ニセモノの道州制
大前研一の日本のカラクリ
「地方の時代」が叫ばれる一方、その主体となる統治機構は、完全な制度疲労を起こしている。
小川 剛=構成 加藤雅昭=撮影 AP Images=写真
西松建設の問題でも明らかになったように、地方に無駄な空港ができる最大の理由は、空港建設のゼネコン利権がそこにあるからだ。私が住んでいる千代田区にも行政に食い込んでいる利権屋がいて、たくさんの高齢者が入居待ちの状態であることを無視して、破格の超高級高齢者施設をつくっている。
ゴミの収集や焼却などを見ても、複数の市町村で一緒にやったほうがよほど効率的なのに、業者の利権になっていてそう簡単には手放さない。
水道も利権である。東京の水は幸い都が管理しているが、関東広域で一括管理すれば、江戸川の下流で活性炭を限界まで使った浄水ではなく、利根川水系や渡良瀬遊水池の美味しい水を都民も飲めるようになる。九州の福岡は毎年夏場に水不足で悩まされるが、九重山を隔てた大分県は悩んだことがない。道州制にすれば福岡の水不足はたちどころに解決する。
このように、我々の生活の安全と安心にかかわる行政サービスは、大きな行政区でやったほうがいいものもあれば、小さな行政区でやったほうがいいものもある。
しかし日本の統治機構は、戦後半世紀以上が経過し、歪みが拡大し続けた結果、生活者にとってひどく使い勝手の悪いものになっている。大山鳴動して行われた市町村合併も、気がついてみれば行政サービスの向上どころか、西松事件に象徴されるように、ますます利権の巣窟になって身動きが取れなくなっている始末なのだ。
利権行政の根絶には「道州制」しかない!
日本が抱えているさまざまな国内問題を一つ一つ考えていくと、最後には現行の行政システム、統治機構の問題に行き着く。それは利権にからめとられている現場では変えられない。国政が決めなければいけないのはこの種の問題であり、それこそが国政選挙の争点となるべきなのだ。
現業の行政区を一度オールクリアにして、日本の国家運営の体系はどうあるべきか、統治機構をどうするのか、改めて決める。そして都道府県や市町村という現行の区割りを廃して、新しい時代に即した国家構成の単位として「道州制」を取り入れようというのが、かねてからの私の主張である。
私の道州制プランはこうだ。区割りはシンプルに、道州とコミュニティの2通りだけにする。
大前 研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾
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