
消費者心理の落ち込みで際立つ価値保存の機能
貨幣の役割
貨幣本来の役割とは「交換の媒介」なのだ。
公認会計士・税理士 柴山政行 高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成
また、さきほどの貨幣的評価の公準とも関連する「価値の尺度」の役割がある。たとえば、大量生産された製品と、匠が伝統の技を駆使して時間をかけながら生み出した作品では、どのくらい価値の違いがあるのか、そのままではわからない。そこで両者に価格をつけると、誰の目から見ても公平な尺度での比較ができる。
そして、残るのが「価値の保存」である。設備投資にあてる余裕ができても、投資に適切な時期でなければ、手控えるのが普通だ。そこで貨幣の形で持っていれば、投資に適した時期まで価値を減じることなく留保できる。
政府紙幣の提唱の理由として、景気浮揚を期待する声がある。人々が財布の紐を緩めない理由は「買いたいモノがない」「買うお金がない」「買う気がない」かのいずれかだが、一部に爆発的な売れ行きを示すモノがある現状を考えると、ほとんどの人に「(いまは)買う気がない」のだと思う。つまり、価値を保存する役割が特に利用されていると考えられる。
でも、なぜ買う気がおきないのだろう。それは雇用や老後を含めて、将来に対する不安が高まるばかりだからだ。だとすれば、政府紙幣の発行で貨幣供給量を増やすより、政府には、ほかにやるべきことがあるような気がする。
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