
「21世紀版・ケインズ政策」とは?
特別連載:ケインズ再降臨!!【第13回】
21世紀版のケインズ政策には、20世紀に見られなかった大きな特徴が一つある。それは、「環境」への配慮である。
小島寛之 帝京大学経済学部准教授
財政政策の本当の意義
そんなわけで今回は、公共事業という財政政策の意義について、もう一度論じ直すことにしたい。『容疑者ケインズ』では、「公共事業は景気対策にはならない」ということを徹底的に論証するために、財政政策自体に何の意味もないような印象を与えてしまったかもしれない恨みが残ったからである。
この連載で徹底的に検証したように、ケインズのいうメカニズム、つまり「投資不足から需要不足が起きる」という理屈が仮に正しくても、財政政策が景気を浮上させる、ということは正しくならない。ケインズは、このことを明らかに錯覚している。いくら公共事業をしても景気など良くならない。このことは、多くの実証研究とも整合的である。
しかし、大事なのは、たとえ景気回復の役に立たなくとも「無意味」とはならない、ということなのである。実際に、無視できない人数の人が、「金融危機」や「経済危機」という、自分たちの責任でない「事故」によって、不可抗力的に職と生活費を失っているのだから、そういう人々にはなんらか救済の手が打たれてしかるべきである。
職を失うことは、単に収入を失う、ということだけではなく、生き甲斐や自尊心や誇りまでも失うことにつながる。我が国の憲法は、基本的人権や最低限度の文化的な生活を保証していることを忘れてはならない。公共事業は、景気回復にはつながらないが、あたりまえのこととして「失業対策」とはなるのである。
そこで、公共事業の本当の意義を考えるために、ここではあえて、ケインズの枠組から離れて論じることを試みよう。つまり、不況の原因がどうであれ、普遍的に言えることを考えることにする。
まず、再認識する必要があるのは、「貨幣が購買力である」という見方だ。
1万円札を保有している、ということは、とりもなおさず、1万円の価格の商品やサービスを手に入れられる「購買力」というものを保有していることを意味する。
この購買力というのを入手するには、2つのルートがある。
小島 寛之
帝京大学経済学部経営学科准教授。経済学博士。数学エッセイスト。1958年生まれ。東京大学理学部数学科卒業。同大学院経済学研究科博士課程修了。専攻は数理経済学、意見決定理論。著書に『サイバー経済学』(集英社新書)『確率的発想法』『文系のための数学教室』(講談社現代新書)『エコロジストのための経済学』(東洋経済新報社)『完全独習統計学入門』(ダイヤモンド社)『容疑者ケインズ』(プレジデント社)などがある。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
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