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2009年 6月 21日

「アートの五輪」第53回ヴェネチアビエンナーレ(1)

ビジネスマンのための「現代アートABC」【第28回】

今年も2年ぶりに、地元の人々も楽しみにしているヴェネチアビエンナーレが始まりました。

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肝心の映像作品の内容ですが、誰もいないジャルディーニ公園の中のイギリス館周辺の四季を作品にしていて、夜の風景や自然の中に生きる昆虫、野良犬が歩きまわる様子などを淡々と描いていました。お祭り騒ぎの始まりに、誰もいない、誰も知らないジャルディーニ公園を描いているのは、なかなかシニカルな作品で面白いと思います。

権力や抵抗、記憶をテーマに写真や映像作品を発表してきたアフリカ・カリブ系イギリス人のマックウィーンは、今や、お洒落で人気のある“旬”のアーティストなので、そういうアーティストを選出してくるイギリス館にはある種の健全さを感じます。

他にも、映画を再構成してロマンティックな映像作品にしているカナダのマーク・ルイス、大自然の中で起こる悲劇や地球を感じるスピード感溢れる映像美のオーストラリア館のショーン・グラッドウェルなども、未来を感じさせる作品でした。初参加のアラブ首長国連邦のラムヤ・ガーガッシュは親しい人と過ごす空間であるベッドルームの写真を展示し、オープニングには、会場を盛り上げるために王族の方々も出席され、ドバイの建築模型が置かれた部屋では華やかなパーティーが行われました。

黒いテントで覆われた日本館の外観と、やなぎみわの作品「Windswept Women」 。
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黒いテントで覆われた日本館の外観と、やなぎみわの作品「Windswept Women」 。

映像作品が多い中にあって、テーマとインスタレーションで直球勝負をしていたのが日本館のやなぎみわです。「老少女劇団」と題された、新シリーズの巨大な写真立てに入った作品の迫力と屈みこんで見るテント小屋の映像、そして日本館全体を黒テントで覆ってしまった今回の展示は、私は20年近く見ている日本館の展示の中でもっとも美しく、ヴェネチアという清濁を飲み込み、アドリア海の祝祭カーニバルを享楽する地に相応しい展示はなかったと思います。少ない予算で、ヴェネチアビエンナーレを理解し、最高の展示を行ったやなぎみわには、心から拍手を送りたいです。

今回のジャルディーニ公園展示の特徴は、映像作品が多かったことです。これは昨年来の世界的経済危機によって、制作予算が削られたことの影響もあるでしょう。また、今回のビエンナーレのもうひとつの特徴として、各国が代表アーティストの選出について戦略を変化させてきていることが挙げられます。

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プロフィール

山口 裕美

Yumi Yamaguchi●アートプロデューサー&アートジャーナリスト。アーティストをもっとも近くから応援するその活動から「現代アートのチアリーダー」の異名を持つ。ウェブサイト、トウキョウトラッシュを主宰。アート系NPO法人芸術振興市民の会(CLA)理事。エレクトロニックアートの祭典「eAT金沢99」の総合プロデューサー、2004年ARS ELECTRONICA ネットビジョン審査員。著書に「TOKYO TRASH web the book」(美術出版社)、「現代アート入門の入門」(光文社新書)、「COOL JAPAN-疾走する日本現代アート」(BNN新社)、「芸術のグランドデザイン」(弘文堂)、「Warriors of Art」(講談社インターナショナル)、最新刊「The Power of Japanese Contemporary Art」(アスキー)がある。

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