職場の人間関係学
2009年 6月 22日

看護師採用現場に学ぶ「値打ち人材」獲得法

快適な職場環境を実現したのは、人材不足解消に挑んだ1人の看護部長だった。

働き続けたいのに、疲弊して辞めていく

看護師へのインタビューを通して見えてきたのは、多くの看護師が「働き続けたい気持ちはあるのに、疲弊して辞めている」という現状だった。

看護師が不足している現場では、一人ひとりの負担や責任が増し、疲弊して辞めてしまう。医療事故に注目が集まる中で、看護師へのプレッシャーも高まっている。休みも取れない。結婚して子供が生まれても、ライフスタイルの変化に合わせた働き方の選択肢がない……。疲れ切って辞めていく看護師の悲痛な声に、病院側が応えきれていないことが、看護師不足を招いている一因だった。

「看護師の確保だけが問題ではない。新しい病院では、看護師を不幸にしてはいけないと思いました」、熊谷氏は振り返る。

そして、プロとしてのキャリア形成、働きやすい職場環境、(家庭を含めた)ライフスタイルの尊重の3つを備えた職場をつくるべく、一つひとつ形にしていった。

まずはキャリア形成について。多くの病院では数年ごとに異動があり、必ずしも本人が希望する科に所属できるわけではないが、同病院では各人に希望の配属先を聞き、それを100%叶える。

管理職、教育担当、スペシャリスト、ジェネラリストなどの将来像についても、本人の希望に沿った進路をとれるよう、研修を受けさせるなどのサポートを行っている。例えば管理職を希望する看護師には、外部の管理職研修などのキャリア形成支援が行われる。また、がん、小児、手術、透析などの特定分野で専門性を持って働きたい場合には、日本看護協会で専門看護師、認定看護師の資格認定を受けられるようサポートをする。

「看護師には、自分で決めた専門性を持ち、アイデンティティーを持ってほしいんです」と熊谷氏は言う。

風通しがよく、働きやすい職場をつくるための工夫もした。

看護師間、医師、患者や患者家族などとの人間関係は看護師のストレスの大きな要因となる。熊谷氏は、「余計なストレスから看護師を守る環境をつくりたい」と考えた。

病院内でのコミュニケーションを円滑にし、一人ひとりが抱える問題やストレスを共有できるよう、フラットな組織を心がけた。例えば看護部長、看護師長などの役職名で呼ばず、名前で呼ぶようにした。また、現場主義を貫き、できるだけ看護師長と現場スタッフで判断したことを、上司に事後報告させる形にするよう徹底した。

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プロフィール

大井 明子

ライター

おおい・あきこ●ワシントン大学卒業後、時事通信社に入社し、記者として警察、経済などを担当。再びの留学を決意し、米国コロンビア大学国際公共政策大学院を卒業。大手家電メーカーなどを経てライターとして独立。

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