
野副州旦:胸にともる「お客の近くに」の灯
経営者たちの40代:富士通社長[2]
どんなに厳しい仕事でも、楽しみながらやりたい。「頑張る」などという無理やりやるような言葉は、嫌いだ。
経済ジャーナリスト 街風隆雄 撮影=門間新弥
日本で「ライバル企業の情報を集めろ」と言われても、難しくない。でも、言葉も不自由な海外でやれというのは、しんどい。「IBMウオッチャー」だったニューヨークの任務は、無理難題と思えた。でも、やってみれば、わくわくする日々だった。「結局、この仕事は、自分にしかできない」と思えたからだ。ワシントンでも、同じだ。『論語』に、こんな言葉がある。
「三人行、必有我師焉」(三人行けば、必ず我が師有り)――3人で歩いているとすれば、必ず、他の2人から教えられることがある、との意味だ。優れた人がいれば、その良き点を吸収する。何かに欠けた人ならば、それを自分の反省材料とする。つまり、どんな環境や条件の下にいても、自分を磨いてくれる「師」はあり、学ぶことがある。自分が成長しないことを、環境や条件のせいにしてはいけない、との戒めだ。
行き先や任務が何であれ、若いときだけでなく、たとえ40代になってからでも、海外へ出て新しい経験ができる機会があれば、男女を問わず、ぜひ行くべきだと思う。それが「出世コース」から脇道にそれるように思っても、逃してはいけない。
ただ、海外での仕事の面白さも大変さも、すべて、日本にいる上司によって決まる。自分の場合、送り出した上司は、IBMの情報を持つことが社内権勢につながると考えていた。だから、夜中でも電話をかけてきて、「日本で、こんな噂が出ている。すぐに、調べろ。24時間以内に返事をしないと、許さない」などと言ってきた。「何で、こんな人間のために、夜中にたたき起こされなきゃいけないのか」と腹が立った。
だが、ある先輩を思い出す。入社直後、その先輩に言われた。「サラリーマンというのは、必ず上司がいる。その上司が『お前、こうやれ』と命じたとき、『いや、そう言われても、ちょっとできそうもありません』と言えば、済むのか。いや、所詮は、やらされる。どうせやらされるなら、『はい、わかりました』とひとこと言って、その後で考え、悩めばいい」。米国での日々は、これで通した。何事も「誰も経験していないことを、自分にやらせてくれているのだ」「自分にしかできない仕事なのだ」と考えた。そんな思考でいれば、たとえ30代、40代で難関に遭遇しても、乗り切れる。
街風 隆雄
経済ジャーナリスト
つむじ・たかお●1947年生まれ。71年慶応義塾大学経済学部を卒業後、朝日新聞社に入社。経済部記者として産業キャップ、金融キャップ、経済部次長、静岡支局長、本社編集委員などを歴任。2007年独立。著書に『私の源流―トップ経営者からのメッセージ』(朝日新聞社)などがある。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
絶好調企業は必ず効果的な「朝礼」をしている!レポートはこちらから





























