
「アートの五輪」第53回ヴェネチアビエンナーレ(2)
ビジネスマンのための「現代アートABC」【第29回】
ビエンナーレの魅力の一つは、現代アートのイベントでありながら、実は世界の政治経済の縮図になっている点です。
山口裕美=文
新しく「展示館」と呼ばれることになったイタリア館の入口も毎回、注目すべきアーティストが担当しますが、今回はオノ・ヨーコさんと一緒に生涯業績部門で金獅子賞を受賞したジョン・バルデッサーリが入口に海と空、そしてヤシの木を出現させました。普段は重厚なファサードなのですが、軽く、本当に青空と繋がるような美しさがありました。
日本人でこの企画展に招待されたのは金獅子賞を受賞したオノ・ヨーコさんと関西の「具体」のメンバーです。オノさんは60年代の詩の作品を展示館で、代表作であるチェスの作品や洋服をカットしてゆくビデオ作品などがパラッツエット・ティト(Palazzetto Tito)に展示されています。具体は田中敦子、元永定正ら9名の作品を一部屋に展示し「GUTAI」と紹介されていました。具体のメンバーは1993年に「具体野外展」として大規模に紹介されたことがあるので、素晴らしい作品群ではあるのですが、正直なところ、今さらという気持ちがしました。
展示作品で興味深かったのは、トーマス・サラセノのクモの巣のような立体作品です。大きな部屋全体に、細い線に見える糸で作られた小宇宙は、迫力がありました。サラセノは近年「Air Port City」シリーズを発表しているのですが、バックミンスター・フラーやピーター・クックといった建築家の考え方と共鳴していると感じました。
軽さという点では、ロシア館にも展示していたパヴェル・ペパースタインは、絵本のような雰囲気で、徹底して未来、それも2100年~3000年くらいの未来の絵を描いていて、奇妙さとユーモアを強く感じました。
今回のビエンナーレの特徴は(1)映像作品が多い、(2)巨大なもの、膨大なものが少ない、(3)物故作家が多いと3つほど挙げられるのですが、実はビエンナーレの存在を薄くしてしまうほど強烈だったのが、フランスの実業家で現代アートコレクターのフランソワ・ピノーのコレクションを展示する美術館、プンタ・デラ・ドガーナのオープンでした。
山口 裕美
Yumi Yamaguchi●アートプロデューサー&アートジャーナリスト。アーティストをもっとも近くから応援するその活動から「現代アートのチアリーダー」の異名を持つ。ウェブサイト、トウキョウトラッシュを主宰。アート系NPO法人芸術振興市民の会(CLA)理事。エレクトロニックアートの祭典「eAT金沢99」の総合プロデューサー、2004年ARS ELECTRONICA ネットビジョン審査員。著書に「TOKYO TRASH web the book」(美術出版社)、「現代アート入門の入門」(光文社新書)、「COOL JAPAN-疾走する日本現代アート」(BNN新社)、「芸術のグランドデザイン」(弘文堂)、「Warriors of Art」(講談社インターナショナル)、最新刊「The Power of Japanese Contemporary Art」(アスキー)がある。
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