
「アートの五輪」第53回ヴェネチアビエンナーレ(2)
ビジネスマンのための「現代アートABC」【第29回】
ビエンナーレの魅力の一つは、現代アートのイベントでありながら、実は世界の政治経済の縮図になっている点です。
山口裕美=文
ビエンナーレでは、全体のテーマを設定し、世界中からアーティストを招致して企画展を行うディレクターが毎回選ばれます。ディレクターはいわばビエンナーレの顔。今年のヴェネチアビエンナーレのディレクターは、ダニエル・バーンバウム。スウェーデン人で、現在フランクフルト市立美術大学学長も勤めています。今年46歳。異例の若さでの抜擢が話題となりました。ビエンナーレのプレジデント、パオロ・バラッタは、バーンバウムを指名した理由として「教育者としてアートの現場やアーティストに近い立場にあり、アートマーケットや流行に左右されず、新しい価値観を作ることが出来る」と語っています。
そのバーンバウムによる企画展「Fare Mondi/Making Worlds/制造世界」の第1会場、アルセナーレを見ていきましょう。元造船所跡地を会場にしているこの場所は、あまりに広くて、気合いを入れて見ないと集中力が切れてしまうほどです。
毎回、この会場の入口はその年の企画展を代表するようなアーティストが選ばれ展示されます。今年は、リジア・パペ。作品から受ける印象では若いアーティストかな、と思ったのですが、実は2004年に77才で亡くなっているブラジルのアーティストでした。細い銅と金の糸のような立体作品で天井と床をまるで光そのもののように照らす作品でした。マーケットで売れるような派手な作品ではありませんが、繊細な美と作品から感じられる浮遊感は、世界を再構築する静かな力なのかもしれません。
会場を少し進んで右手に見える作品はシルド・メイレレスです。彼の作品は、6つの部屋を紫、紺、緑、黄、オレンジ、赤にして、通り抜けながら、次の部屋へ色の残像を残し、全身で色を体験する作品でとても楽しめました。
山口 裕美
Yumi Yamaguchi●アートプロデューサー&アートジャーナリスト。アーティストをもっとも近くから応援するその活動から「現代アートのチアリーダー」の異名を持つ。ウェブサイト、トウキョウトラッシュを主宰。アート系NPO法人芸術振興市民の会(CLA)理事。エレクトロニックアートの祭典「eAT金沢99」の総合プロデューサー、2004年ARS ELECTRONICA ネットビジョン審査員。著書に「TOKYO TRASH web the book」(美術出版社)、「現代アート入門の入門」(光文社新書)、「COOL JAPAN-疾走する日本現代アート」(BNN新社)、「芸術のグランドデザイン」(弘文堂)、「Warriors of Art」(講談社インターナショナル)、最新刊「The Power of Japanese Contemporary Art」(アスキー)がある。
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