新・会社論
2009年 7月 01日

【3】リッツ・カールトン・バリ事件

名門ホテルを襲った懲罰金10億円裁判の一部始終

「ビジネスで一番大切なのは信頼関係。オリエンタルな考え方かもしれないが、儲かる、儲からないは二の次」 

>>「リッツ・カールトン・バリ事件」は5回連載。目次はこちら

「ブランドは消費者の中にも存在する」

リッツ・カールトン・バリ裁判(詳細)

今回の事件に関して、「マリオットのマルチ・ブランド戦略は正しい。ただ、フランチャイズの運用方法を誤ったにすぎない」という声もある。

マルチ・ブランド戦略とは、同一カテゴリーで複数ブランドを展開することによって市場シェアの拡大を狙ったものである。例えば、フォードの元CEO、ジャック・ナッサーは、豊富な金融資産を武器にジャガー、ボルボ、アストン・マーチンなど高級車ブランドを次々とM&Aし、世界展開を果たした。これもマルチ・ブランド戦略によるものだ。

ブルガリとリッツ・カールトンのブランド・コラボレーションによって、いまなおブルガリ・バリが、両者に利益をもたらしているのも事実であり、裁判に負け、支払う懲罰金を、拡大化戦略には不可欠なビジネスコストと捉えることもできる。

一般に、ブランドを構築するには長期戦略に基づく継続的な投資と努力が不可欠といわれる。しかし、資金力のある企業にとっては、時間や労力、コストをかけてブランドを一から育てるより、高付加価値のブランドを買収し傘下に収めるほうが手っ取り早い。そのほうが、株主利益を短期間で最大化できる。

また買収された側においては、親企業によってコスト構造の抜本的な見直しが行われ収益改善するケースも少なくない。

マリオットがリッツ・カールトンの株式を99%取得した98年、リッツ・カールトンの収益は12億ドルだったが、07年には30億ドルへと大幅な収益増を果たしている。今年1年で16の新しいホテルを開業する予定となっている。

だが、このマリオットの拡大戦略の中で、一つ見落とされているのではないかと思える点がある。「ブランド」を見ている消費者の目線だ。

「ブランド・エクイティ(資産価値)は、企業だけでなく消費者の中にも存在します」

と述べるのは、ブランド研究の第一人者、中央大学大学院戦略経営研究科の田中洋教授である。

ブランドを活用した利益拡大戦略には効果がある半面、消費者への配慮を怠ると、長年かけて育て上げてきたブランド価値が“一瞬で”損なわれてしまうこともある。他方、ブランドが大きな危機に見舞われたとしても、対応によってブランド・エクイティを上げることも可能だ。

1 2 次のページへ
Feedback
この記事を 全部読んだ
  一部だけ読んだ
  あまり読まなかった
内容は とても参考になった
  まあ参考になった
  参考にならなかった
 
サイト内検索
プレジデントのおすすめ記事
特集
経営者たちの40代

武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。

朝礼のヒント

絶好調企業は必ず効果的な「朝礼」をしている!レポートはこちらから

プレジデント最新記事