世界最高峰のホテリエが語る「サービスの真髄」
名門ホテルを襲った懲罰金10億円裁判の一部始終
「自分が一流でなければ、一流の人に仕え、一流の仕事をすることはできない」
ノンフィクション・ライター 吉村清志=文 西川みこ=編集協力 ライヴ・アート=図版作成 AP Images=写真
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世界最高峰のホテリエ、H・シュルツ氏が語る「サービスの真髄」
“We are Ladies and Gentlemen Serving Ladies and Gentlemen”。
「これは、ホテル学校での課題作文につけたタイトルです。唯一Aをもらいました。そのとき私は15歳でした」
ドイツの田舎町に生まれたホルスト・シュルツ氏は、11歳のとき、両親に「ホテルで働きたい」と打ち明けた。両親は驚いた。シュルツ氏は、生まれてから一度もホテルにもレストランにも行ったことはなかったし、ホテルで働いている知り合いさえいなかったからだ。なぜホテルで働きたいと思ったかは、いまとなっては覚えていないという。
郵便局員だった父は、できればシュルツ氏には医者になってほしいと思っていた。しかし、決意が固いことを知ると、母親はシュルツ氏を、街でいちばん豪華なホテルに連れていき、ホテルの支配人ホテリエになりたいという息子の願いを伝えた。
シュルツ氏はバスボーイの仕事に就けることになり、こうして片道3時間の通勤が始まった。
「ホテルに来る人はみんなVIPの紳士淑女なのだから、あなたも身なりをきちんとして、髪をきれいにとかして彼らにふさわしい人間になりなさい」と母親に言われ、身を引き締めて向かった初日、足は1日中、震え通しだったという。
数週間後、レストランにヘッドウエーターが現れると、空気が変わるのをシュルツ氏は感じた。客席にいる大勢の美しい身なりの紳士淑女たちが、彼を、そのなかでの最高の紳士と認めていることに気づいたのだ。
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