
親族間の「疑心暗鬼」を回避する方法
「アフター会社人生」準備&建て直し大作戦:老親の世話
介護は「いつまで続くかわからない」という不確定な部分があるだけに、費用への不安は大きい。
文=介護・医療ジャーナリスト 長岡美代 取材協力=アンティ・ケア/菅 美穂子、ナイスケア/水下明美
■検証!そのとき私はどう対処したか
母親が認知症、父親も要介護2に
要介護になるきっかけで多いものの一つに認知症がある。井上尚美さん(仮名、59歳)の母親は7年前、アルツハイマー病と診断された。
異変を感じていたのは、父親の義男さん(仮名、85歳)だった。その数年前から「財布がなくなった」という訴えが増え、銀行でカードを何度も再発行してもらった。時には警察を呼ぶ騒ぎにもなった。
母親が重度の認知症と診断されてからは、病院や介護老人保健施設を転々とした。入院費や差額ベッド代が家計に重くのしかかった。思うような介護が受けられずに悩んだこともあったが、ケアマネジャーの支援でようやく都内にある特別養護老人ホームに入所でき、現在はサービス内容にも満足している。
父親も数年前に腰椎を骨折し、自力での起き上がりに困難を伴う。介護保険の「要介護2」に認定され、週2回の訪問介護や、介護ベッドを利用しながら自宅で暮らす。近くに住む尚美さんが毎日訪れ、食事などの面倒をみている。父親の様子がどうしても気にかかり、ケアマネジャーに相談する機会も多いようだ。
退職金を長男の家につぎ込んでしまったのが誤算だった
父親の介護費用は月約3500円。ほかに医療費と薬代が月約2500円かかる。母親の施設費用は、食費と部屋代(4人部屋)込みで月11万円だ。両親が生活費を切り詰めながら公的年金で賄っているという。
本来ならば、4000万円近くあった父親の退職金が頼りになるはずだった。ところが、「二世帯住宅を建てて一緒に住もう」という兄の提案で、父親は退職金を全額つぎ込んでしまったのだ。結局、兄との同居は叶わず、以来疎遠になっている。
「長男を大切にする昔の風習にならって退職金を託したが、思うようにいかないのが世の常。いまになって女性の大切さがわかる」と、義男さんはこぼす。退職金で老後は安心だと考えていただけに、裏切られた思いは消えないようだ。
長岡 美代
介護・医療ジャーナリスト
介護経験をきっかけに、高齢者の介護や医療、ライフスタイルを中心とした取材・執筆活動を続ける。著書に、『60代からの住み替えを考える本』『親の入院・介護に直面したら読む本』など。
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