
「貸し渋り」「貸し剥がし」のメカニズム
BIS規制
評価損が膨らむ状況から考えれば、貸し剥がし、貸し渋りが横行することは容易に想像できる。
公認会計士・税理士 柴山政行 高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成
銀行には、自己資本比率に関する「BIS規制」があって、国際業務を行う銀行は8%以上、国内の業務に限る銀行では4%以上を保つ必要がある。自己資本比率の数値が高いほど、銀行の健全性は高いと評価される。基準を割り込んだ銀行に対しては、金融庁によって早期是正措置が発動される。
銀行の資産には現金や株式、債券などの有価証券があるが、昨年来、有価証券の時価は下がっており、その評価損は自己資本比率を低下させることにつながる。程度によってはBIS規制を維持するのが困難になることも考えられる。
話をわかりやすくするために、現金が100億円あり、それを融資に回した場合のバランスシートについて考えてみることにしよう。
バランスシートの左には資産を記載するが、融資を行う前に「現金100億円」としていた記載は、融資を行ったあと、「貸出金100億円」という記載に変わる。これだけ見ると、資産の名目が変わっただけである。
しかし貸出金については、貸し倒れを想定しておく必要がある。仮に貸倒引当率を1%とすれば、貸出金100億円のうち、1億円を貸倒引当金として経費に計上する必要が生じ、資産は1億円減ることになる。
本来、貸倒引当率は融資先の破綻懸念の大きさによって異なるものだが、BIS規制の標準的手法においては、大企業・中堅企業向け融資の100%をリスクアセット(危険資産)として扱わなければならない。個人向け融資については75%、住宅ローンについては35%を、リスクアセットとして計上する必要があるのだ。
ここでおさえておきたいのは、リスクアセットは自己資本比率を算出する際の分母となる、という点である。企業や個人に対する融資額が大きくなるほど、自己資本比率を求める際の分母が大きくなり、結果、自己資本比率は低くなる。自己資本比率を高めるためにはリスクアセット、つまり貸出金を縮小する必要がある、というわけだ。
そこで懸念されるのが、貸し渋りや貸し剥がしである。日本の銀行にBIS規制が本格適用されたのは1992年度以降である。その際、いきなり融資額の全額返済を求めるといった貸し剥がし、融資を繰り返し行っていた企業に突然、融資を停止するなどの貸し渋りが起き、中小企業の破綻を招いている。
柴山 政行
公認会計士・税理士
しばやま・まさゆき●1965年、神奈川県生まれ。埼玉大学経済学部卒業後、92年10月に公認会計士二次試験に合格。大手会計事務所勤務などを経て、98年に柴山政行公認会計士事務所を開設。コンサルティング、実践的な会計教育など業務の拡大にともない、2004年に合資会社柴山会計ソリューションを設立する。近著に『一目で見抜く!財務諸表解読法』がある。
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