
麻生首相の「空っぽ外交」、オバマの「鮮烈外交」
堀田佳男の「オバマの通信簿」【15】
世界に横たわる問題を眺めると、アメリカ一国ですぐに解決できる案件は少なくなっている。
文=堀田佳男
麻生内閣は、将棋でいえばすでに「投了」した政権である。多くのメディアはそんな首相を「外交に強い麻生」と呼んだ。
たしかに7月のイタリアサミットやワシントンでの日米首脳会談(2月)、4月の日中首脳会談などで、首相は国内であまり見せない笑顔をふりまいていた。だがそれは国内の諸問題から一時的に解放された反動にすぎない。外相の経験があるだけに外務省との関係が良好との評判もあるが、単に無茶をしないだけで、首相として外交課題に大きな成果を上げてきたわけではない。
拉致問題や北方領土問題は相変わらず未解決だし、中東和平を推し進めたわけでもない。「首相になったら外交ではこれをやる」という公約が国民に広く知れ渡ってもいなかった。そんな首相のどこに「外交の強さ」があるのか分からない。点数評価をすると、10点満点で4点しか出せない。
一方、就任してから半年を迎えるオバマ大統領の外交はどうか。不況の中での政権樹立という点では日米が共通の土壌にたつが、ブッシュ政権の外交政策から明確に方向転換したオバマ外交は、ある意味で鮮烈だった。簡単に述べると、単独主義から国際法に順守した複合主義への変化である。福田前首相から引き継いだ麻生首相が外交面での変革を唱えただろうか。同じ自民党ということもあるが、麻生らしさはなかった。
世界に横たわる問題を眺めると、アメリカ一国ですぐに解決できる案件は少なくなっている。テロとの戦い、核拡散、環境問題、新型インフルエンザなど、どの国も集団的な安全保障に力をいれる必要がある。
そうした中、オバマ大統領にとっての個別的問題としてはまずイラク戦争があった。昨年の大統領選挙でも大きな争点となり、政権当初から大きな足かせになると思われた。しかしオバマ大統領は就任1カ月後、選挙公約どおり、16カ月以内に米軍を完全撤退させると発表してイラクとの決別宣言を行った。
「第二のベトナム」といわれるほど泥沼化していたイラク戦争はそれ以降、急速に収束しはじめる。それでイラクの安全保障問題が解決したわけではないが、メディアのイラク問題の扱いは、すでにイラク戦争が過去のものになったかのように縮小した。
代わって、アフガニスタンへの米軍増派によるテロ組織の掃討作戦が拡大している。イギリス軍のアフガニスタンでの死者数はすでにイラクでの犠牲者を越えた。オバマ政権にとってのベトナムになりつつあり、今後どう決着をつけていくかが課題だ。
堀田 佳男
1957年東京生まれ。早稲田大学 文学部を卒業後、ワシントンDCにあるアメリカン大学 大学院国際関係課程修了。大学院在学中に読売新聞ワシントン支局で1年間助手を務める。卒業後、米情報調査会社に勤務。アメリカの日刊紙の日本語ダイジェストの執筆・編集に携わる。永住権取得後、1990年に会社を辞して独立。以来、ジャーナリストとして政治、経済、社会問題など幅広い分野で精力的に執筆活動を行っている。25年の滞米生活後、2007年春帰国。
著書に『大統領はカネで買えるか?』(角川新書)『大統領のつくりかた』(プレスプラン)など。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
絶好調企業は必ず効果的な「朝礼」をしている!レポートはこちらから





























