
NASAに全面依存の「きぼう」に希望なし?
堀田佳男の「オバマの通信簿」【16】
元宇宙飛行士、チャールズ・ボールデン氏が、NASAの新しい局長に就任した。その意味するところは?
文=堀田佳男
7月15日、アメリカの航空宇宙局(NASA)の新しい局長が決まった。連邦上院はスペースシャトルでの飛行経験が4回ある元宇宙飛行士、チャールズ・ボールデン氏(62)を局長に承認した。
政権が交代するたびに、ワシントンでは数千人の人事異動がある。NASAにも新しいトップが就いたと考えると大きなニュースではないが、ボールデン氏の場合は少しばかり事情が違う。
オバマ大統領は5月下旬、ボールデン氏を次期局長に指名している。その時、私は大統領の宇宙計画への「やる気」をみた思いがした。景気対策や医療保険改革だけでなく、宇宙開発へも強い思い入れを感じたのだ。
経緯を説明しよう。
若田光一さんが国際宇宙ステーションから地球に帰還した時だけに、水を差すような内容で恐縮だが、実はNASAの関心はすでに国際宇宙ステーションから離れている。彼らの目はすでに「もう一度人を月面に立たせる」ことに向けられ、その先には「火星に人を送り込む」計画がある。
昨年8月の大統領選時、オバマ氏はこう語っている。
「子供の頃、NASAは有人月面着陸という目的を達成することでアメリカを一つにした。この誇れる偉業は世界中を喚起させもした。21世紀になって、私の大きな目標は有人宇宙探査計画を維持し、NASAの次なるミッションを完遂させることだ」
この真意は、国際宇宙ステーションの継続ではなく、有人の火星探査を成功させることにある。1961年にケネディ大統領が人類を月に送り込む計画を宣言したように、オバマ大統領は21世紀には有人の火星探査がゴールであるとの野心を表した。
アポロ11号が40年前に月面着陸した後、NASAは72年12月のアポロ17号まで、人を月に送り続けた。それ以後は計画が棚上げされ、宇宙計画の主軸はスペースシャトルに移された。当時、多くの人はアポロ計画の次期プロジェクトとして火星や金星への有人探査を期待した。月探査の次であれば、より遠くの惑星に考えがおよぶのは当然である。だが、スペースシャトルは月よりも遠くの世界へ行くことはなかった。それはある意味での「後退」だった。
ところが04年、ブッシュ大統領は「コンステレーション計画」で、2020年をめどに再び人間を月面に送りこむ宇宙計画を発表した。その先には火星探査も待っている。オバマ大統領は図らずも、ブッシュ政権の流れを受け継いだ。
堀田 佳男
1957年東京生まれ。早稲田大学 文学部を卒業後、ワシントンDCにあるアメリカン大学 大学院国際関係課程修了。大学院在学中に読売新聞ワシントン支局で1年間助手を務める。卒業後、米情報調査会社に勤務。アメリカの日刊紙の日本語ダイジェストの執筆・編集に携わる。永住権取得後、1990年に会社を辞して独立。以来、ジャーナリストとして政治、経済、社会問題など幅広い分野で精力的に執筆活動を行っている。25年の滞米生活後、2007年春帰国。
著書に『大統領はカネで買えるか?』(角川新書)『大統領のつくりかた』(プレスプラン)など。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
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