儲かる会計思考入門
2009年 8月 06日

減税は本当に金持ち優遇だけなのか?

贈与減税

約1000億円規模の減税も大きな柱で、その中でも要注目が贈与税の減税だ。

キーワード: 会計考現学 夫婦・家族
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100年に一度といわれる金融危機の余波が続く中、政府・与党は追加経済対策を次々と打ち出している。約1000億円規模の減税も大きな柱で、その中でも要注目が贈与税の減税だ。

贈与税は年間110万円までの贈与については無税となる非課税枠があり、これを超えると贈与額に応じて10~50%の贈与税が課せられる。税率はかなり高い水準で、国税の中でもとりわけ負担の重い税金といえる。

贈与減税の内容
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贈与減税の内容

追加経済対策は、個人が住宅を購入したり、増改築する場合に限り、非課税限度を610万円まで500万円拡大するという内容。2010年末までの時限措置で、成立すれば今年1月の贈与分まで遡って適用するという。贈与を受けるのが20歳以上で、親、祖父母など直系尊属からの贈与が対象となる。減税を受けるためには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに入居することが条件だ。

さて、この対策案について、あなたはどう感じるだろう。受け取り方はさまざまだと思うが、「金持ち優遇だ」という不満を感じる人も少なくないはずだ。しかし、ちょっと考えていただきたい。金持ち優遇はいけないことだろうか?

たしかに100万円を超える贈与ができるということは、金持ちであるといって差し支えないだろうし、「それだけの贈与を受けられる人は恵まれている」ととらえることもできる。「500万円の贈与が受けられるのなら、今すぐにでも家を買いたい」「リフォームをしたいのだが、親に余裕がなくて、そんな期待はできない」という人にとって、減税による直接的なメリットはない。「富める人を優遇する前にすべきことがあるだろう」と考えるのも自然なことだろう。

しかし、贈与を受けない人にまったく恩恵がないかといえば、それは違う。

国内の就業者数のうち、建設業に従事する人の割合は10%を超えており、GDP(国内総生産)に占める割合は5%近い。住宅産業が日本経済にとって重要な地位を占めていることは間違いない。家を持てばカーテン、家電などの買い替え需要も見込まれるし、引っ越しも必要だ。住宅取得は人を動かし、モノを動かし、金を動かす力があるのだ。

需要が高まれば雇用が創出される。売り上げが伸びれば景気が浮揚し、消費が増え、結果的に私たちの所得が増えることも期待できるだろう。金持ち優遇であることは間違いないが、贈与税の軽減によって、お金持ちのお金を動かすことは決して悪い話ではないのだ。

そもそも、日本は金持ち優遇とはかけ離れた税制をとっている。資産家の親が贈与をしなければ、財産は相続という形で子世代に引き継がれるが、私はこの相続税にも問題があると思う。

たとえば財産として土地を保有しているとしよう。親は固定資産税という税を負担しながら土地を維持しているうえ、相続の際には相続税が発生し、二重課税と解釈することもできる。さらに次の代が相続すれば、一つの財産について何度も相続税を負担することになる。これは私有財産の侵害とはいえまいか。

イタリア、スペイン、スウェーデン、ロシア、カナダ、オーストラリア、中国などでは相続税がない。オバマ政権誕生によって復活の可能性が否定できないものの、アメリカでは2010年に廃止予定である。イギリスでは野党が、フランスではサルコジ大統領が廃止を公約に挙げており、ともに検討中である。

富める者を羨む気持ちは私にもある。しかし視野を広げれば、考えは変わってくる。グローバリゼーションによって貨幣のボーダレス化が進む中、今後、「相続税がある国にいる必要はない」と考える人も出てくるのではないだろうか。

プロフィール

柴山 政行

公認会計士・税理士

しばやま・まさゆき●1965年、神奈川県生まれ。埼玉大学経済学部卒業後、92年10月に公認会計士二次試験に合格。大手会計事務所勤務などを経て、98年に柴山政行公認会計士事務所を開設。コンサルティング、実践的な会計教育など業務の拡大にともない、2004年に合資会社柴山会計ソリューションを設立する。近著に『一目で見抜く!財務諸表解読法』がある。

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