解決!法律塾
2009年 8月 20日

タクシーが遠回り。差額は返してもらえるか?

旅客運送契約

運転手に行き先を告げた瞬間、両者の間には「旅客運送契約」という法律関係が成立する。

キーワード: 生活 世のなか法律塾
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タクシーで通い慣れた行き先へ向かうとき、運転手が、乗客に黙って遠回りをし、いつもより大幅に高い運賃を請求された。疑問に思ったが、求めに応じて高額の運賃を支払ってしまった。後になって、タクシー会社を相手に差額を返すよう求めることはできるだろうか。

タクシー代金裁判で何を立証すべきか?
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タクシー代金裁判で何を立証すべきか?

ある人がタクシーに乗り、運転手に行き先を告げた瞬間、両者の間には「旅客運送契約」という法律関係が成立する。運転手は、最も早く到着するであろう合理的なルートを選び、安全に乗客を運ぶ債務を負う。そして、乗客は降車の際に運賃を支払う債務を負うことになる。

交通上の法律問題に精通する加茂隆康弁護士によると、冒頭のケースの場合は、乗客に断りもなく、合理的なルートを選択することを怠ったタクシー運転手に「債務不履行」があるという。

そして、目的地まで遠回りしたルートでの運賃と、合理的なルートでの運賃との差額が「損害」になるので、乗客はタクシー会社に損害賠償を求めることができると説明する。

また、合理的なルートを通ったが、到着地が客の指定した目的地と違っていた場合も、到着地から本来の目的地までの交通費が「損害」となりうるという。たとえば、「新宿」の駅前を目的地と指定したのに、運転手の誤解などで「新宿三丁目」駅前で降ろされた場合は、新宿三丁目から本来の目的地である新宿まで行くのにかかった交通費を請求できる。

さらに、タクシー会社に賠償を求めるにあたっては、民法上の不法行為のケースより、立証のうえで乗客に有利な扱いになると加茂弁護士は指摘している。

当事者の一方が、過失で相手に損害を与えてしまった場合、そのことを理由に、他の一方が加害者に損害賠償を求めるなら、一般論では、損害賠償を請求する側が、相手の「注意義務違反(過失)」や「違法性」を証明しなければならない。

しかし、法律上「旅客運送」に分類されるタクシー業務は、利益を出すために継続して行われている「営業的商行為」であり、旅客運送をめぐる法律トラブルにおいては、商法が、運転手と乗客の双方に適用される。加茂弁護士の説明によると、本ケースでは、商法590条一項を適用することにより、タクシー運転手が遠回りして目的地に到着したことにつき、「注意義務違反(過失)」があったことを乗客が証明しなくても、乗客は損害賠償を請求できるという。

つまり、タクシー会社側が損害賠償を免れたければ、運転手に過失がなかったことを立証しなければならない。「遠回りした事実はなかった」「遠回りすることの確認を事前にとった」「遠回りはしたが、渋滞や事故を避けるなどの合理的な目的があった」など、運転手に注意義務違反がなかったことを証明できなければ、乗客の損害賠償請求が通る。これを「立証責任の転換」という。

この注意義務違反の有無をめぐる問題が、実際上、争点になるので、その立証責任を相手方に押しつけてしまえる乗客側のメリットは大きい。
 タクシー会社は、国土交通省から許可を受け、旅客運送業務により利益をあげる目的で業務を行っている以上、大きな責任も負うべきだというのが、民法における基本的な発想である。この考え方を「報償責任の法理」という。

ただし、タクシー運転手が遠回りのルートを選んだ結果、大きな商談の場に遅れてしまい、先方を怒らせ、商談がパーになってしまったとしても、その損失相当額をタクシー会社に請求することはできない。

運賃に疑問があれば、まずは運転手と交渉し、車内に表示されたタクシー会社の連絡先に電話を入れる。そして、妥当と思う額を支払い、自分の連絡先を渡して降車すべきだと加茂弁護士は助言する。乗り逃げと誤解されないよう、落ち着いて振る舞いたい。

プロフィール

長嶺 超輝

司法ジャーナリスト

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