実践ビジネススクール
2009年 9月 05日

売れない時代にモノを売るにはどうするか

フィリップ・コトラー『STP理論』:一歩抜きん出る戦略、ここにあり

キットカットは従来から認知度が高く、低価格が魅力の商品だったが、淘汰される懸念があった。

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Philip Kotler-フィリップ・コトラー(1931~)

現代マーケティングの第一人者とされる経営学者。ノースウェスタン大学経営大学院教授。シカゴ大学で経営修士号、マサチューセッツ工科大学で経営博士号を取得。ハーバード大学で数学、シカゴ大学で行動科学も学んだ。著書に『マーケティング・マネジメント』等。マーケティングの理論を、教会や美術館、大学、病院などの非営利組織にも活用すべきと主張している。
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コトラーの提唱したSTPとは、市場を細分した層に分け(Segmenta tion)、自社の標的となる市場層を選び(Targeting)、市場で競争者と差別化できる地位を確保する(Positioning)というものだ。多くのマーケターはこれに則ってマーケティング戦略を立案する。

具体的には、まず、市場の選好マップをつくり、消費者の好みや年齢などの軸で市場における選好分布をマトリクス表などで表し、自社製品や競合製品をプロットする。そして進出可能な細分市場を見つけ、そこに合った製品を開発し、投入するのである。

ただ、この手法に問題がないわけではない。その問題とは、製品カテゴリーを所与としてしまって、どうしても企業のマーケターの目から見たものになりがちとなる点である。そのため、その商品を消費者が自分の生活の中でどのように意味づけし、どのようなモノとして使っているのかを見る「消費者の視点」に注意を払い、組み入れる必要がある。

STPは既存の競合関係や既存の製品カテゴリー内部における差別的有利性を追求する枠組みである。しかし、別項で取り上げたクリステンセンが述べているように、持続的な技術開発によって市場が望む以上の性能をもたらす性能の供給過剰が、成熟期にある先進国市場では起こりやすい。

既存製品の品質や性能の改良に消費者が反応しない性能の供給過剰の時代においては、消費者の視点は多くの場合、既存の製品カテゴリー概念を超えたところで発見したいところである。

例えば、パナソニックのノートパソコン「Let's note(レッツノート)」は仕事で使うモバイルパソコンという、従来にはなかったカテゴリーに焦点を当てて人気を博している。もはや軽量で耐久性が強く、バッテリーの駆動時間が長いビジネス用のモバイルパソコンといえば、レッツノートが消費者の頭にすぐ浮かぶようになっている。

このように自社が先頭を切れるカテゴリーを創造することがマーケティングの基本的な課題であり、すでに圧倒的なナンバーワンが存在するカテゴリーに食い込もうと考えるのは馬鹿げている。そう指摘したのがアル・ライズである。

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プロフィール

石井 淳蔵

流通科学大学学長

いしい・じゅんぞう●1947年、大阪府生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。神戸大学大学院経営学研究科教授などを経て、2008年4月より、流通科学大学学長。専攻はマーケティング、流通システム論。著書に『ブランド』『マーケティングの神話』『営業が変わる』などがある。

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