社長の仕事術
2009年 9月 14日

伊藤忠商事 丹羽宇一郎:本物のリーダーへの道

変革トップ「先が見えない時代、いかに自分を耕すか」

「ワタシハ、アリニナレル。ワタシハ、トンボニナレル。シカモ、ワタシハ、人間デアル」

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世界一になるつもりで徹底して勉強する

<strong>伊藤忠商事会長 丹羽宇一郎</strong>●1939年、愛知県生まれ。62年名古屋大学法学部卒業後、伊藤忠商事入社。98年社長、2004年より現職。「自立の精神と負けない心を持ってほしい。そういう気持ちで日々努力する人は、情報が流れてもパッと掴める。時間の緊張感が大切だ」
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伊藤忠商事会長 丹羽宇一郎●1939年、愛知県生まれ。62年名古屋大学法学部卒業後、伊藤忠商事入社。98年社長、2004年より現職。「自立の精神と負けない心を持ってほしい。そういう気持ちで日々努力する人は、情報が流れてもパッと掴める。時間の緊張感が大切だ」

一昨年逝去された作家城山三郎さんが、商社マンの日常を描いた『毎日が日曜日』という小説がある。ビジネスマンにとって幸福な人生とは何かを追求したこの作品に、主人公が社訓を語る場面が登場する。「ワタシハ、アリニナレル。ワタシハ、トンボニナレル。シカモ、ワタシハ、人間デアル」。

アリのように黙々と勤勉に働けるか。トンボのように複眼でものを見ることができるか。何より血の通った温かい人間の心を持つことができるか。

これが実話に基づいていることを私は城山さんと対談をさせていただいたときに知った。伊藤忠商事の役員が新卒の採用試験でこの質問をしていたのだ。アリ、トンボ、人間。この3つのステップには優れたリーダーへと成長していくプロセスが見事に示されている。私にとっては大先輩がそれを看破していたことに意を強くしたものだった。

もちろん、すぐに優れたリーダーになれるわけではない。入社して30代前半までの最初の10年間はアリのように泥まみれになって働く。若い時期に人生を切り開くために必要な仕事の基本を体に覚えさせる。力を出し切るまで働くという意味を込めて、私は“泥のように働け”という。

次の40代前半までの10年間は、自分が関わっている仕事について日本一、いや、世界一になるつもりで徹底して勉強することだ。学者と議論しても負けないほど勉強を重ねる。自動車業界に身を置いていれば、「自動車」と名のつく本はすべて買うぐらいの覚悟が必要だ。並大抵の努力ではない。

アリのように働き、経験を積めば、仕事に関するさまざまな知識を覚えることができる。ただその多くは言葉で表現できない「暗黙知」で、そのままでは概念化できない。そこで勉強を通した「形式知」を得ることで経験と理論が結びつき、トンボのような複眼的な思考を身につけることができるのだ。

私の場合、9年間に及ぶアメリカ勤務と帰国後の数年間がこの時期にあたる。食料畑を歩んだ私は「アメリカの農業については誰にも負けない」といえるだけの力をつけようと、「アメリカ」と名のつく本は農業関係を中心に片端から買い集め、読破した。

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