職場の人間関係学
2009年 9月 29日

嫌いな人とも話が弾む「ブリッジマン」になる道

他人とは考え方の枠組みが違っているから、コミュニケーションがうまくいかないのだ。

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相手の頭の中にある思考パターンを意識できるようになると、驚くほど上手にコミュニケーションが取れるようになる。では、どうすれば相手の思考パターンを汲み取れるようになるのだろうか。

「?」「!」世界一短い手紙のやり取り

どうすれば人といいコミュニケーションが取れるだろうか。火山学を専門とする私は、火山についてならばいくらでも話を合わせることができる。しかし、ほかの話題になるとうまく通じない。自分の得意な分野以外で人と話を盛り上げるのが難しいのである。

話が通じないのは、「フレームワーク」が合わないからではないかと、あるとき考えはじめた。フレームワークとは、考え方の枠組みである。頭の中にある思考パターンといってもいい。他人とは考え方の枠組みが違っているから、コミュニケーションがうまくいかないのだ。

いいコミュニケーションのキーポイントは、このフレームワークにある。自分と他人のフレームワークの違いを意識することが、人づき合い上達の秘訣なのだ。さらに、自分のフレームワークを人へ上手に橋わたしできたときに、意思の疎通がうまくいく。

たとえば、相手が理解しやすい言葉で語りかけることで、抵抗が少なくなる。相手にとってここちよい関係を先につくりながら、互いのフレームワークを擦り寄せてゆくのである。私はこのような人間関係の達人を、「ブリッジマン」と呼ぶことにした。

フレームワークを理解するためにわかりやすい例を出そう。

「あなたにとって、大金とはいくらですか」

この問いかけをすると、いろいろな金額が返ってくる。2万~3万円から数十億円までおどろくほど差が出るのだ。違いの由来は、「大金」という言葉から、「財布の中身」「給料」「マイカー」「投資資金」「銀行ローン」「目標年収」「宝くじ1等賞」などさまざまな連想が広がることにある。

これらの回答の判断基準、もしくは答えの向こうにあるものは何だろうか。それは、人それぞれのお金に対する価値観であり、時には人生設計でもある。つまり、職業、収入、年齢などさまざまな条件から生じる判断基準によって答えは変わる。これがフレームワークの実体である。

フレームワークが一致している間柄の場合、コミュニケーションはどうなるだろうか。我々日本人が好む心の動きに「以心伝心」がある。いちいち言葉で説明を加えなくとも、わずかの情報から相手を推し量り事を進める姿に、美点を認めるのである。「1を聞いて10を知る」とも言う。

以心伝心の例として興味深い逸話がある。19世紀フランスの作家ビクトル・ユゴーが『レ・ミゼラブル』を刊行したときのことだ。ユゴーは出版社の社長に本の売れ行きを尋ねるため、以下の手紙を送った。

「?」

すると社長からこういう返事がきた。

「!」

つまり、『レ・ミゼラブル』の売れ行きはどうだろうか? という問いに対して、爆発的に売れている! と返ってきたのである。世界一短い手紙のやり取りとして有名な話だ。

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プロフィール

鎌田 浩毅

京都大学大学院人間・環境学研究科教授

かまた・ひろき●1955年生まれ。火山研究のほか科学啓発に熱心な「科学の伝道師」。著書に『一生モノの勉強法』(東洋経済新報社)、『世界がわかる理系の名著』(文春新書)、『ブリッジマンの技術』(講談社現代新書)など。

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