
数字嫌いの原因は脳の防衛機能
数字に強い脳、弱い脳
脳は、最初は新しいものに対して拒否反応を示すようにできています。未知のものに対して警戒するという防御機能です。
医学博士 米山公啓=文 大井明子=構成
脳は、最初は新しいものに対して拒否反応を示すようにできています。これは、新しいもの、すなわち未知のものに対して警戒するという防御機能です。具体的には、右脳前頭葉が警戒反応を示します。「さあやるぞ」と意気込んで数字に取り組もうとしても多くの人は、ここで挫折してしまうのです。
しかし、同じ刺激が続くと慣れてきて拒否感が薄れ、恐怖感を克服することができます。苦痛が減り、「おもしろい」と感じるようになります。この段階になると、対象に親しみを覚え、情報は左脳前頭葉で処理されるようになっています。
大切なのは、「繰り返すこと」です。新しいものに対する拒否反応がなくなるまで繰り返すことで、数字に楽しさを見出せるようになると、理解が加速度的に進むようになります。また、何度も数字に接することで、脳の処理能力は上がり、頭に入るようになります。脳には非常に柔軟性があるので、今苦手なことも、繰り返すうちに苦手でなくなったりするのです。
右脳的な能力を使いながら数字に取り組むのも効果があるでしょう。数字が苦手ということは、裏を返せば映像や直感をつかさどる右脳が発達しているということ。それを活用して数字を図式化するとよいでしょう。単なる数字の羅列では頭に入らなくても、グラフなどの図にすることで、頭に入りやすくなるはずです。
注意したいのは、繰り返しばかりで飽きがきてしまうこと。飽きると数字への興味を失い、脳の処理能力も下がってしまいます。
そうならないよう、絶えずドーパミンを出すには、レベルを上げて、少し難しいことをやってみるのが効果的です。脳も筋肉と同じで、まったく負荷にならない運動をしていては伸びません。「できるようになった」という小さな成功体験を感じたら、少し負荷を上げて、次の目標設定をするのです。
数字が苦手な人は、こういった成功体験がないため、余計に苦手になっていることが多いようです。成功体験がなければドーパミンが出ず、数字に対する意欲も持つことができません。
日本人は比較的左脳型の人が多く、映像や芸術、直感に強い右脳型が少ないと言われています。数字を覚えたり計算したりという、受験レベルでは左脳の能力が大きく関係しますが、数学者や将棋のプロ棋士など「天才」レベルになると、左脳だけでなく、ひらめきやセンスなど右脳的な能力も求められます。
天才レベルになると、論理を組み立てて答えを導き出すのではなく、ぱっと見ただけで瞬時に答えがひらめくといいます。
ビジネスでも同様です。優れたビジネスマンは、数字に強いだけでなく、「売れるかどうか」が直感的にわかったり、ユニークなアイデアを生み出す力に長けています。
しかし、それは生まれつきのものばかりではなく、経験に基づく部分が大いにあります。最初は数字が苦手でも、反復して取り組めば、右脳的な理解ができるようになるものです。
私も医大生時代は、血液検査の結果について「どの数値がいくら以上・以下だと異常か」が、なかなか暗記できずに苦労しましたが、今では検査結果表をぱっと見ただけで、その数値が何を表す数値かをわざわざ照らし合わさなくても「この位置にこの数値があるのはおかしい」と直感的にわかるようになりました。検査結果表が映像として頭に入るようになったのです。
苦手意識を克服し、飽きないようにレベルを上げながら繰り返して経験を重ね、判断力をつければ、ビジネスに活きる、数字に強い脳をつくることができるのです。
米山 公啓
医学博士
1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ医科大卒。専門は神経内科。主な著書に『医者がぼけた母親を介護するとき』『親を元気に育てれば、あなたの老後も安心です』『左脳がみるみる若返る』などがある。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
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