実践ビジネススクール
2009年 10月 13日

先が見えない時代、正しい結論を導く5つのカギ

経営者自身の判断力を支える知性は、現場経験から生み出される

あるメーカーのCTOに「何を根拠にそのような選択をされたのか」と尋ねたら、「気合です」という答えが返ってきた。

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経営者は無知の部分が圧倒的に多い状況下でも自らの選択に確信をもって戦略的決定をしなければならない。経営者の直感的選択への確信を支えるものは何か。筆者は5つの根拠から説き明かす。

過半数が賛成したらもはや手おくれ

経営者の何気ない一言から、あれこれと考え込んでしまうことがある。経営学者の宿命なのかもしれない。

最近もそのような経験があった。あるメーカーのCTO(最高技術責任者)のお話を聞かせていただいたときだった。このCTOは、しばらく前に基幹技術に関して大きな選択をしておられたので、「何を根拠にそのような選択をされたのか」と尋ねたら、「気合です」という答えが返ってきた。

最初ははぐらかされたような印象を受けたが、よく考えると、わかるような気もする。重要な選択をしたときの心境を他人に説明するのは難しい。とりわけ基幹技術の戦略的な選択は説明が困難である。基幹技術の選択に関して、明確に説明できるようになってから選択していたのでは遅いからである。どの選択がいいかよくわからないときに選択をし、投資を行わなければならないのである。

説明できるようになるまで選択を遅らせたのでは経営者としての責任を果たせない。経営者は説明責任を持つということを言う人がいるが、説明できるようになってから意思決定をしているのが問題ではないかと思うこともある。

クラレの創業者、大原孫三郎氏は、10人の役員のうち、1人か2人しか賛成しないときが物事を成し遂げる好機であり、過半数が賛成するようになったら手おくれで、大多数が賛成するときにはとっくの昔に手おくれになっていると語っておられる。

戦略的決定は、将来、とりわけ長い将来にかかわる決定である。そのような先のことを予測するのは難しい。戦略的決定は、その成否がわからないということを前提にして行わねばならぬ。

経営戦略論の創始者のひとりであるアンソフは、「戦略的決定は部分的無知(パーシャルイグノランス)の下での意思決定」であると言っている。部分的といっても、既知の部分よりも無知の部分のほうが圧倒的に多い状況での決定である。

このような意思決定について、わかっていることだけを前提にして説明できるような判断をするというのは合理的ではない。むしろ、「気合です」としか答えられないような意思決定をするのが経営者の責任といえるかもしれない。

だからといって運を天に任せて意思決定を行わざるをえないと結論してしまうのは短絡的である。外からは選択が直感的に行われているように見えても、経営者の側には、自らの選択にかなりの確信があるはずである。

この確信はどこからくるのか。その出どころを探ることによって、経営者の選択がいい結果をもたらす可能性を高める根拠を探ることができる。そのような根拠とは何かを考えてみよう。

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プロフィール

加護野 忠男

神戸大学大学院経営学研究科教授

かごの・ただお●1947年、大阪府生まれ。70年、神戸大学経営学部卒業。75年、同大学大学院博士課程修了。79年から80年までハーバード・ビジネス・スクール留学。専攻は、経営戦略論、経営組織論。著書に、『日本型経営の復権』『競争優位のシステム』などがある。

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