
“ドライ”“ゼロ”戦争で実現「アサヒ勝ちパターン」
三本の矢で10年連続トップは守れるか〔アサヒビール【2】〕
“ゼロ戦争”でアサヒの先行優位は揺るがなかった。「スーパードライ」が巻き起こした“ドライ戦争”の再現にほかならない。
ジャーナリスト 岡村繁雄=文 津藤文生=撮影
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06年6月、アサヒビール本社に新しく「マーケティング本部」が置かれた。新商品を開発する部署で、本部長は泉谷が兼任したが、彼はその右腕として副本部長(現本部長)に池田史郎を抜擢した。池田は社内でも“才人”として知られる。食に関する消費者行動やトレンドを調査分析する「お客様生活文化研究所」の所長を6年務めた人物である。
「泉谷からいわれたのは『マーケティングを改革しなさい』の一言。実は私、ビールマーケットはやったことがないんです。ただ、ずっと消費者の研究をしていましたから、お客様のライフスタイルに合った売れる商品をつくれということだったわけです。私の持論は、徹底したマーケット調査をすれば、必ずヒット商品は見えてくるということ。まず、そこからスタートしようと考えました」
そう語る池田の眼には、消費者のニーズの潮目が、発泡酒が出たとき、そして新ジャンルが発売された際に、明らかに変わったと映っていた。最後発の参入になってしまったのは、アサヒがその変化を読み切れなかったからだ。そこを変えなければ、売れる商品はできない。
それでも、池田が着任する6月直前の5月には変化が出てきた。キリンを追撃する、新ジャンルの「ぐびなま。」が発売されたのである。“アサヒらしくない”ともいわれたカジュアルなパッケージで、お客の支持を集め、通年でのシェアトップ奪回に貢献する。
新体制で最初に世に問うたのが、10月に発売した「極旨」だ。池田は「これが、いまでいう“麦の新ジャンル”でした。発泡酒に大麦のスピリッツを加えれば、コクが出て、おいしくなることはわかっていました。ユーザーが求めているのは、ビールのような品質感。そこに開発の焦点を絞ったわけです」と話す。つまり、消費者の嗜好を掴んで、新しい価値を提案するという開発手法だ。
結果的に、06年中に「ぐびなま。」は840万ケース、「極旨」は380万ケースを売った。キリンを抜き、年間でシェアトップになったが、キリンとの差は1日の販売量に満たない92万ケースだったことからすれば、この2つの商品は大健闘だった。とはいえ、アサヒにホッとする余裕はなかった。
再び、キリンを追う立場となったアサヒが陥りがちなのが、焦りだったのではないか。泉谷もそう感じていた。
「新商品開発の体制を改革し、責任者も代えることで、とにかく全体の雰囲気を変えたかった」
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