実践ビジネススクール
2009年 10月 14日

ビジネスモデルに見る「プロ野球再生」の道

日本の球界史に登場した3つのビジネスモデルを検証し、プロ野球の再生方法を説く。

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一流選手の米国・大リーグへの人材流出など、日本のプロ野球は存亡の危機にあるとの議論が多い。筆者は日本の球界史に登場した3つのビジネスモデルを検証し、プロ野球の再生方法を説く。

「プロ野球の危機」が議論される4つの根拠とは

今からちょうど5年前の2004年9月18、19日に、シーズン中であるにもかかわらず、日本プロ野球選手会(当時の会長は古田敦也。本稿では、敬称を省略する)による史上初のストライキが行われた。このストライキは、赤字経営に悩まされていた大阪近鉄バファローズの親会社である近鉄が、球団経営からの撤退を決めたことに端を発していた。

結局、大阪近鉄バファローズは、当時の12球団のなかで唯一、日本シリーズ制覇を達成することなく、オリックス・ブルーウェーブとの球団統合(その結果、オリックス・バファローズが誕生した)によって、姿を消した。この04年から05年にかけての一連の経緯をとらえて、それを、プロ野球存亡の「危機」とみなす向きも多かった。

日本のプロ野球が危機を迎えているという議論の根拠としては、次の4点がしばしば指摘される。

(1)野球人気はサッカー人気に押され気味であり、子供たちのあいだでは「野球離れ」が生じている。
  (2)プロ野球の一流選手が次々とアメリカ・大リーグ入りし、日本球界からの「人材流出」がはなはだしい。
  (3)テレビでのプロ野球中継が減少している。
  (4)赤字経営の球団が大半である。

これらの根拠は、本当のことだろうか。もし本当だとしても、それは、プロ野球の危機を意味するだろうか。

(1)については、子供たちのあいだでサッカー人気が高まっているのは、事実である。しかし、そのことは、野球人気の減退を意味しない。

財団法人日本高等学校野球連盟の調査によれば、同連盟に加盟する硬式野球部員数は、1998年から11年連続で増加しており、02年に過去最高水準を突破して15万1437人になったのち、08年には16万9298人にまで達している。

また、(3)については、地上波のテレビでのプロ野球中継が減少しているのは確かであるが、他方で、ケーブルテレビや衛星放送等でプロ野球中継を楽しむ視聴者が増えていることを忘れてはならない。各球団へのロイヤルティ(忠誠心)の高いファンがプロ野球中継を有料放送で見る時代へ、着実に移行しつつあるのが、現状である。巨人を除く11球団の場合には、ファンが応援するチームの試合をテレビで見る機会は、最近になって、むしろ増大したといえる。

さらに、(4)については、最近、パ・リーグを中心にして、地域密着型のビジネスモデルによる経営努力が成果をあげ、なかには黒字転換する球団が出始めたことを見落としてはならない。その結果、08年時点で、かつてのように慢性的な赤字経営にとどまっている球団は、全体の半数前後にまで減少した。

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プロフィール

橘川 武郎

一橋大学大学院商学研究科教授

1951年生まれ。東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程単位取得。経済学博士。青山学院大学助教授、東京大学社会科学研究所教授を経て、現在一橋大学大学院商学研究科教授。専攻は日本経営史、エネルギー産業論。著書に『日本電力業発展のダイナミズム』、共著に『現代日本企業』などがある。

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