解決!法律塾
2009年 10月 22日

マンション更新料は払わなくても構わないのか

賃貸借契約

マンションの貸し借りをめぐり、今までの共通認識を覆す判決が、今年7月、京都において示された。

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マンションの貸し借りをめぐり、今までの共通認識を覆す判決が、今年7月、京都において示された。

「賃貸借の契約期間が満了し、さらに契約を更新して借り続けたい場合は、大家に更新料を支払う義務を負う」という契約内容について、京都地裁は、借り手に一方的に不利であり、消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する契約は無効)に基づき、無効だと結論づけたのである。これを知って更新料の習慣がある東京や京都の読者は「更新料は、払わなくていいの?」と驚いたのではないだろうか。

建物の賃貸借契約で支払う金銭の種類
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建物の賃貸借契約で支払う金銭の種類

そもそも「更新料」とは何なのだろうか。不動産管理などの問題に詳しい久保内統弁護士によると、更新料には、これを払うことにより、借り手は向こう2年間なら2年間、追い出されることなく住んでいられる利益を保証されるという意味合いがあるとされてきた。

また、家賃の値上げが法律上、簡単に許されない現状から、実質的な家賃不足分の埋め合わせであるという考え方などもある。

しかし、更新料を徴収する慣習を支えていたこれらの論拠が、7月の京都判決では、ことごとく否定された。加えて、8月の下旬にはさらに上の大阪高裁でも、同様の事案で更新料の無効判決が出たのだ。

「京都の件は地裁レベル。初めての判断なので影響力も大きかったが、これだけですべての流れが決まるわけではなかった。しかし、その後に示された大阪高裁の判断の影響力は大きい」(久保内弁護士)

更新料を取る大家側の旗色は悪い。それでもなお、更新料を取る理由があるとすれば、以下の2点だろう。

まず1点目は、「一連の判決が、京都という特殊な土地柄と関係している可能性がある」(同)点である。京都では、1年契約で更新料は通常家賃2カ月分と、首都圏より高い。最初に納める保証金も高額。さらに、どれだけ部屋を綺麗に使っても、契約終了時には敷金の一部しか返ってこない「敷引き」の特約まで組み合わされているケースもあるなど、大家の利益に偏りすぎた契約内容が多い。判決の事例でも、首都圏より更新料などの水準が高い。よって、首都圏の事例については、そのまま今回の判決を当てはめるわけにはいかないという考え方だ。

2点目は、今回の判決が高裁レベルであるため、慣習を覆すには、最高裁の判断を待つ必要があるというものだ。

裁判所が過去に示した判断を、「判例」というが、厳密には、最高裁判所の判断だけが判例としての価値を持つ。また、裁判所法4条には「上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する」とある。つまり、高裁以上では、まだどのような判断が下るかはわからないのだ。

更新料は、これまで長い間、慣習として定着していた。にもかかわらず、その正当性が問われる事態となった背景には、「世の中の大きな『消費者重視』の流れがある」(同)。

かつて、滑り止めで受験した大学に納めていた入学金は入学しない場合にも返金されないのが常識だったが、今では返金されるようになった。9月からは新たに消費者庁が設置されるなど、消費者重視という時代の流れは加速している。更新料に対する風当たりが強くなっているのも、この延長線上にある。

また今後、新たに問題となる可能性があるのが「礼金」だ。実は更新料よりも根拠が脆弱だ。

「訴訟になれば、その根拠が認められるかどうかはわからない。現に『礼金ゼロ』の物件も増えてきている」(同)

今後、更新料や礼金の扱いはどうなるのだろうか。最高裁の判断が注目されるところだ。

プロフィール

長嶺 超輝

司法ジャーナリスト

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