
「3つの兆し」が語る米国経済の大破綻
米国の巨額な政府資金調達はクレジットクランチを起こしかねない
有事のドルへ避難するよりも、ドルを持ち続ける危険を市場が感じ始めているのである。静かにドルから世界のカネが逃げ出し始めたようだ。
東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科教授 伊丹敬之=文
米国経済はリーマンショックで本格的破綻をしたとみなされることが多い。だが、この9月に発表された為替、金、雇用の経済指標を見るかぎり、米国経済の最悪の事態はこれからやって来ると筆者は警告する。
金融へ負荷をかけた「2つの9月の大事件」
9月11日が再びやってきた。
世界中の多くの人が同時に一つのテレビ映像を繰り返し見続けた事件というのはそれほど多くないだろうが、1963年11月22日のケネディ大統領暗殺と2001年9月11日の世界貿易センタービル崩壊の映像は、その数少ないリストに間違いなく入るだろう。
私自身も、その2つの日を明瞭に記憶している。8年前のその日、関東地方には台風が来ていた。私は窓の外の激しい風雨を気にしながら、あの超高層ビルに旅客機が突っ込むという信じがたい映像を見ていた。私の甥があのビルで働いていたのである。
その後、同時多発テロはイスラム過激派によるアメリカの支配への抗議であったことを知ったとき、私には世界貿易センタービルの崩壊の映像がベルリンの壁の崩壊の映像に重なりあうように思えた。ともに、一つの時代の終わりの象徴なのではないか。
89年11月のベルリンの壁の崩壊は、共産主義体制という時代の終わり、米ソ対立という冷戦の時代の終わりの象徴であった。と同時に、資本主義の勝利の時代、アメリカ一国覇権の時代の始まりをも意味していた。そして、世界貿易センタービルの崩壊は、アメリカ一国覇権のグローバリゼーションの時代が早くも頓挫し始めていることの象徴に見えたのである。
もちろん、世界の趨勢としてグローバルな経済活動の進展は続くだろう。しかし、その進展を市場原理主義ともいいたくなるような考え方でかなり強引に推し進めようとする動きは、どこかでチェックがかかる。その警告が極端な形で出たのが、この同時多発テロではなかったか。ビル崩壊の映像は、アメリカ一国覇権の時代の終わりの始まりを象徴する映像と見えたのである。
しかし、すぐにアメリカからの反転攻勢がブッシュ大統領のテロとの戦いという形で始まった。それは、ある意味では当然の動きである。テロは許されるべき行為ではなく、アメリカ政府にはそれに対して国土と国民を防衛する当然の義務がある。だが、それがイラク侵攻という形にまでエスカレートするのは、やはりおかしかった。私は03年のイラク戦争開戦直後、アメリカがまだバグダッドに向けて進軍中に、この雑誌で「アメリカは間違った戦争を始めた」と書いた。
9月という月は、どうも縁起がよくない。
伊丹 敬之
東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科教授
いたみ・ひろゆき●1945年、愛知県生まれ。一橋大学商学部卒業、カーネギーメロン大学経営大学院Ph.D。一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2008年4月より、東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科教授。著書に『経営を見る眼』『経営戦略の論理』『日本型コーポレートガバナンス』などがある。
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
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