実践ビジネススクール
2009年 11月 1日

自信過剰の交渉者がはまる「自滅」の罠

絶対に勝てると思った交渉にあっさり負けてしまうのはなぜか

楽勝に見える勝負にも「落とし穴」はいくつもある。相手の力を過小評価してしまったり、いらぬ競争心をあおったり……。

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楽勝に見える勝負にも「落とし穴」はいくつもある。相手の力を過小評価してしまったり、いらぬ競争心をあおったり……。こうした過ちをおかさず、強みを活かしきるにはどうするか。

相対的に強い交渉力を持つネゴシエーターは弱い相手より大きな成功をおさめることが、研究により明らかになっている。しかし、力は大きな重荷になることがある。強いネゴシエーターは、誤った認識や壮大な幻想や間違った戦略にとらわれやすい。また、力は弱いほうの側に信頼できない行動や非情な判断や競争的な動きをとらせる。

本稿では、力が交渉での成功を保証してくれると思い込んでいるネゴシエーターのために5つの注意事項を示し、続いて、こうした間違いをしないようにするための戦略をお伝えする。

(1)相手は思っているよりも強いことがある

あなたが法人対象の営業マネジャーで、年に1度の昇給交渉の準備をしているとしよう。あなたは自分は貴重な社員であるだけでなく部内でトップの業績をあげていると思っている。そして、最も大幅な昇給を得られるはずだと確信している。しかし数人の同僚と雑談するなかで、彼らがあなたの業績を認めながらも、自分たちもあなたが思っている以上にチームに貢献したと確信していることに気づく。

どちらが正しいのだろう。交渉における力の影響を調べる研究で、ノースウエスタン大学のデービッド・メシック教授と私は、強いプレーヤーはさほど強くないプレーヤーの力を過小評価する傾向があることを発見した。われわれは被験者に模擬三者交渉を行ってもらうことにして、交渉の前に各ネゴシエーターに三者の力を評価してもらった。相対的な力の順位については三者とも同じ意見だったが、2位のプレーヤーの力については3者の認識が異なっていた。具体的に言うと、1位のプレーヤーは、2位のプレーヤーの力について、2位および3位のプレーヤーの認識よりはるかに低い評価を下していたのである(2位と3位のプレーヤーは、似通った認識を持っていた)。

このような自己過信の認識は、強いネゴシエーターに問題をもたらすことがある。強いネゴシエーターは、相対的に弱い相手が期待しているほど譲歩を申し出ないだろうし、当然受けられるはずだと思っているほど敬意や謝意を示さないだろう。

(2)自分は思っているほど有益な情報を持っていない

強いネゴシエーターが行う分析は、相対的に弱い相手が行う分析ほど有益でも正確でもない公算が高い。

コーネル大学のエリザベス・マニックスとスタンフォード大学のマーガレット・ニールは、強いネゴシエーターは弱い相手の利益をなかなか正確に判断できないという研究結果を発表している。

弱いネゴシエーターのほうが相手の利益をはるかに正確に判断する傾向がある。力を握っている人々が単純な情報処理を行う傾向があるのに対し、弱い側はより周到かつ複雑な情報処理を行うことが多い。

もちろん、交渉で強いプレーヤーと弱いプレーヤーが同一の情報を受け取ることはありえない。デービッド・メシックと私は、力は矢を防ぐ盾というよりも、むしろ矢を引き寄せるダーツ盤に近いことに気づいた。弱いネゴシエーターは認識上の力の不均衡を「正す」ために、情報を歪曲して伝えるなど、自分が必要だと思うあらゆる手段を用いる可能性が高い。われわれはある実験で、弱いネゴシエーターが強い相手に情報を伝えるときのほうが、その逆の場合より真実を曲げる可能性が高いことを発見した。

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