部課長の基本
2009年 11月 1日

夢から現実に引き戻す新入社員研修の重要性

「自己チュークラゲ」ゆとり世代を戦力化するコツ

好きなことをしたいといいながら、何がしたいのか自分の軸が固まっていない。

>>「ゆとり世代を戦力化するコツ」は5回連載。目次はこちら

しかし、そんな問題含みのゆとり世代とはいえ、採用した人材は企業にとって貴重な戦力であることに間違いはない。現場で成果をあげていけるように育てていく必要がある。そこで注目されているのが、ゆとり世代の新入社員の意識を切り替え、働くことへのモチベーション・アップを図る研修である。先ほどのシェイクでは30人ほどの人事担当者を対象とした新人社員研修セミナーを開催しているが、「案内と同時に定員が埋まってしまう」(森田英一社長)という。

同社の研修では、なぜマナーを身につけることが必要なのかを学びながら、社会人として意識を高めることに力を入れる。顧客だけでなく、社内の上司や先輩も、社会に出たての新入社員の能力をほとんど信用していない。もし信用されて仕事を任されたいのなら、何らかの“証明”が必要だ。そして、新入社員がすぐできる証明が、外見、言葉遣いといったマナーだとわからせる。「それまでサービスを受けていた側から、今度は提供をする側に変わったのだという最初の切り替えが肝心。ゆとり世代の特徴である『根拠のない自信』に対しては自分の思い通りにならないのが社会であることをわからせ、『のんびり志向』に対しては頑張らないと見捨てられるくらいの危機意識を持たせることが重要だ」と森田社長は語る。

図4:伝えにくいが大切なことを伝える際のコミュニケーション手段
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図4:伝えにくいが大切なことを伝える際のコミュニケーション手段

図4を見てもわかるように、コミュニケーションをとる方法として、ゆとり世代は相対よりもメールを好む傾向が強い。上司が指示を与えようとしたら、「メールでください」といってきたゆとり世代の新入社員がいたという笑い話のようなケースもある。そうしたことが非常識であることも理解させていく。

また、自分の好きなことをあまりにも重視するためなのか、配属先が希望と違うと途端にヤル気を失ってしまうゆとり世代の新入社員も多い。大手商社で貿易業務を志望したのに、配属されたのは国内での繊維の取り扱い業務で、転職を考え始めた新入社員がいた。「その業務を通して学ぶべきことは数え切れないくらいあるし、これからチャンスはいくらでも巡ってくるといい聞かせるのに苦労した。何の根拠もないのに、自分ならできると変な自信を持っているようだ」と説得に当たった人事担当者は振り返る。

バブル期のような頭数の確保を最優先した時代とは違って、いまでは各企業ともに基準に満たない人材は採用しない方向へ動きつつある。しかし、それでも人事部には最低限必要な人材を確保せよとの暗黙のプレッシャーがかけられる。だから、就職説明会や面接の場で「あなたのやりたい仕事ができる」「自己実現をしよう」などというリップサービスの言葉がつい口から出てしまう。

「ゆとり世代は自分たちの夢をかなえてくれるディズニーランドかのように会社を考える傾向が強い。しかし、会社にはミッキーマウスもドナルドダックもいない。その現実をきちんと教えて、お客さま意識を抜くことが大切だ」と就職支援や人材育成事業を行っているじんざい社の柘植智幸社長も釘を刺す。

ゆとり世代が共通して持つ意識に「自分は特別」ということがある。核家族化した家庭内ではコミュニケーションの機会が減り、親が叱ることが少なくなった。個性重視の教育に転換した学校では、何か欠点があっても個性として尊重してしまう。相対評価から絶対評価に変わったことで、競争することも少なくなった。その結果、「ナンバーワンにならなくても、自分の世界のなかでオンリーワンであればいいといった偏向した“自己愛”が身に付いてしまう」(公立大講師)のだ。

だからよけいに「自分らしさを活かせる職場」というキャッチフレーズは、ゆとり世代に心地よく響くのだろう。しかし、現実の社会は能力的な欠点を個性として認めてくれるほど甘くない。「それに早く気づかせて、自立できる人間、自省のある人間を育てられるかが、ゆとり世代を戦力化できるかどうかのポイントだ。ただし、彼らはストレス耐性が低く、がんがんやりすぎると萎えてしまうので注意が必要になる」と柘植社長はいう。

そうしたなか着実に成果をあげているのが、10年前ほどから「バンダイアドベンチャープログラム」という独自の研修メニューを導入したバンダイだ。入社後の2泊3日の合宿では、10人強のチームに分かれる。そして、棒やタイヤなど与えられた部材を使って乗り物を作り、制限時間内に一番早くゴールに到達できるかなどを競う。そのなかで個々人の役割や責任を認識させていくのだが、合宿後にゆとり世代もスムーズに職場の仕事に溶け込んでいるという。

>>「ゆとり世代を戦力化するコツ」は5回連載。目次はこちら

プロフィール

伊藤 博之

ジャーナリスト

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